東洋経済オンラインの「国籍」記事に関して二言三言

2017年03月04日 06:00

写真ACより

森友学園問題でも、新旧都知事バトルでもなくて、いまさら国籍問題などという少々「浮世離れ」した話題で申し訳ないところ。しかも本来なら当該記事が掲載した翌日にも出したかったのだが、今週は多忙を極めていたので、週末にズレ込んでしまった。

蓮舫氏の二重国籍問題を取り上げてきた零細言論サイトの編集長としては、月間2億PVの東洋経済オンラインさんが「国籍」に関して言及した2本の記事について、ちょっと違和感と、あと微妙に万が一にもアゴラに対して読者の誤解が生じてはマズイかなという念のための補足で、二言三言、書いておこうと思った次第だ。

今週の東洋経済オンラインでは、本格的に社会復帰し始めた乙武さんが、現代ビジネスとの合わせ技での相変わらずな見事なメディアジャックを見せて、中川淳一郎御大と気鋭のコラムニスト、河崎環氏との対談記事が、怒涛の3日連続で掲載されたのが目玉だった。その記事についてもあとで触れるが、乙武対談の初日に一緒に載っていたのが、こちら。

「日本国籍」取得した元米国人の斬新な本音

アメリカから日本に国籍を移した真木鳩陸氏なるライターさんが、自身の体験を元にした寄稿で、我が国の国籍というものに対する考え方をもっと柔軟にすべきというご主張をなさっている。

想定通りのリベラル文脈も肩すかし感

日本は二重国籍を認めていないので、この筆者は、米国籍の放棄をしたわけだが、手続きの時間的・事務的・経済的なコストはなかなかのもので、蓮舫氏の問題を提起した当方ですら、それなりに同情はする。グローバル化がこれだけ進んでいる中で、「今日の世界では、国籍はますます個人のアイデンティティとは関連性が薄くなっている」と真木氏が指摘するような現実はあるし、日本の融通の利かない国籍制度自体、少なくとも民間人の取り扱いについては、今後議論の余地はあるとは思う。

で、アノ問題についてはどう見ていたのか。東洋経済は、石橋湛山のリベラルDNAを脈々と受け継いでいるので、この記事を読んでいる途中くらいまでは想定通りの文脈。「そろそろ蓮舫カワイソーとか書いてあるのやら」と手ぐすね引いて待っていたのだが、あれれ?書いてないぞ!?

それでも、真木氏の論考にちょっと違和感は残った。政治家と民間人の国籍の取り扱いについて言及されていなかった分、雑というか、消化不良というか、いずれにせよ肩すかしを食らった感があったのだ。

「日本は国籍に対して頭がカタい」とおっしゃることは分かるのだけど、政治家の二重国籍については日本以外でも世論は結構シビアだ。それに、彼が言及しているシリア難民問題に関連付けて言えば、むしろ欧州では、中東からの流入者にテロや犯罪をやらかす人間が紛れ込んでいることがリスクになっている(このあたりのことは八幡和郎さんの著書『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』=飛鳥新社=に詳しい)。

出入国管理を厳格化する風潮に合わせて、EU拡大期に広がっていたコスモポリタン的な考えから変わる流れにあるのだから、どうもそのあたりの問題に触れていないところに、喉越しの悪い炭酸水を飲まされたようなビミョ〜な後味がざらつく。日本も、朝鮮半島情勢がここ20年来でも非常に緊迫化しつつあり、北朝鮮が崩壊した場合の経験したことのない規模での難民リスクという突風が吹いたら、真木氏の体験談ベースのコラムで主張したようなことは、吹き飛んでしまうのではないのか。

なぜ蓮舫氏が叩かれるのか:乙武対談

それから、乙武さんの対談。連載自体は、なかなか面白くて、リベラル論客である乙武さんらしさが出ていた。

乙武洋匡「自分をようやく理解してもらえた」 中川淳一郎と語る「不寛容すぎる社会」の実像 | 俺たちの不寛容な社会

小生と見解が必ずしも一致しないと思ったのは、「ネットたたき」を論じたくだり。乙武さんが「自分自身に余裕がなかったり、自己肯定感がなかったりすると、たぶんそれが『むかつく、偉そう、生意気』と映る」と分析した直後、中川氏がいきなり蓮舫氏の問題に触れる(下線は筆者)。

中川蓮舫さんの二重国籍の話があそこまでたたかれたのも、同じ構図なんですかね。台湾から帰化した結果、国籍が両方あったという話です。ただ、ネットの一部の人は、「民進党っていうのは、中華に日本を売ろうとしている売国政党だ」みたいな言い方があって。そこについに帰化軸が入ってしまった時点で、なんか見下した視線が生まれた。

なぜ蓮舫氏が叩かれるのか。もちろん、「自分自身に余裕も自己肯定感もない」人は一定数いるだろうが、結局は開き直りの姿勢であり、国会質問でのブーメラン芸を繰り返すような稚拙な攻撃性に尽きるんじゃなかろうか。一方で、かつて古谷経衡氏はネトウヨ像を調べた独自調査で、「『ネトウヨは低学歴でニート』は大嘘 その正体は30~40代の中流層」と分析していることも考えると、属性分析としては、やや一面的という気もする。少なくとも、アゴラで追及した3人(私、池田信夫氏、八幡和郎氏)は、蓮舫氏にコンプレックスを感じることなんて微塵もございません(笑)。

面白かったのは、中川氏の分析を受けた乙武さんの意見。「蓮舫さんは『女性』であるという部分が大きい」のだという。

乙武:男性は女性の立場を下に見ていた時代が、長く続いていたと思うんですよね。だから、蓮舫さんのように切れ味鋭く、強い物言いをする女性は生意気だと思われる風潮が、まだこの平成になった世の中でも、あると思うんですよ。でも、今回の騒動までは彼女の言うことがわりと正論だと感じる人が多かったからこそ、生意気だと思いながらも、なかなか反論できずにいた。だからこそ、ほころびを見つけたときに、「しめた、今だ」というのが、一気に吹き出たのかなと。

乙武さんが「根本的には」というように、アゴラでの追及に乗っかって、ネット上で蓮舫氏を感情的に叩いてきた男性ネット民の深層心理では、もしかしたら、それなりに女性蔑視的な価値観があるのかもしれない。が、一応、昨年あの問題の火付け役となったサイトを預かる身としては、少なくとも、コンプライアンス上の観点からの問題提起に過ぎず、たとえ相手が“謝蓮舫”だろうが“謝蓮男”だろうが、性差は、ガチで全く関係なかったということだけは申し添えておきます。

まあ、本稿は「感想」文なので他意はございません。アゴラの昨年の問題提起に対して、万が一の誤解をする読者がいたら嫌だなという「杞憂」と、ある種の「野次」みたいなもの。東洋経済オンラインさんとは、山田編集長には、アゴラ編集長になる前からお世話になっております。この2本の記事をまさに準備中だった2月28日には、ヤフーさんのメディアカンファレンスで、新聞各社のデジタル戦略のあれこれについて意見交換させてもらいました。中川さんとは共通の知り合いは何人もいながら面識はないけど、乙武さんは謹慎前、アゴラでブログを掲載させてもらっておりましたし、そろそろダイバーシティや社会的視点からのスポーツ論考が読みたいので、復帰をお待ち申し上げております。


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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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