千葉県公立高入試 (英語) グローバル人材をつくれるか?

全国の公立高校入試もほぼ終了したようだ。そこで2017年2月に行われた千葉県公立校入試、英語の問題を読み取り、現在の中学3年生が将来、グローバル人材に育つかどうか、予想してみた。

15歳のA君は、この試験にほぼ満点を取り、その後も日本の大学で英語を研鑽し10数年後、外国人との会議によく引っ張りだされるようになった。しかし、外国人の彼への評価は、「英語を理解しているけど、あんまりしゃべらない。いつも、にこにこしている。何を考えているんだろうか?」。こんな将来が見えているようだ。

今年の公立高校の英語の問題は、例年通り、リスニング、英単語の穴埋め、対話形式、英作文、長文などになっている。その詳細は、次のとおり。

2017年首都圏公立高校入試

全体としていえるのは、相変わらず、語順並べや穴埋め問題が多く、英語スキルのアウトプットする問題が少ないことだ。英作文も気象予報士が「明日は雨の予報」。この予報士のコメントを英語で括弧内に20語程度書くというものだ。

6.How will the weather be in Chiba tomorrow?
Tomorrow’s weather ( )
1行程度の簡単な問題となっている

こうした問題の作られ方は、安易な印象をぬぐえない。採点が簡単な問題を優先して出題しているのではないか? リスニング問題は全体の2割程度の比重だ。TOEICに似ている。意識しているのだろうか?

リスニングの内容もアメリカを過剰に意識しすぎている。いまや日本人が英語を学ぶ目的は、ネーティブばかりの欧米が相手とはとは限らないからだ。最近では、アジアの中では、シンガポール、香港、フィリピン、マレーシアはじめ多くの国で英語が話されている。世界の中で英語が共通語化している。

しかし、この試験では、登場する人物や場面は、アメリカ人ばかりを意識したものだ。
5.Where did you stay your trip to the U.S?  などの質問である。

7.(2) また千葉に住むKateの問題。Kateは千葉に住む英語教師。日本の四季をやたら賛辞するのである。そして「She enjoys seeing the beautiful red and yellow leaves on the trees. Kate always talks about her life in Japan to her family when she goes back home.」なのだそうだ。ここで失笑してしまった。露骨すぎる日本をほめたたえるフレーズの登場だ。政府の「Cool Japan戦略」が見え隠れする。中学生に外国人はみんな日本を美しく賛辞するという固定観念を与えるのではないか? 筆者は様々な外国人とコミュニケーションをとるが、いろいろな見方があり、日本の環境や社会、人々の短所長所やおかしさを指摘され、いままで気づかないことが多いのである。だが、こうした入試問題では常に「日本礼賛型、すばらしいニッポン大好き」外人ばかりが登場するのである。

おもしろそうな問題もある。7の問題にはPictograms(絵文字)が登場する。
7.(3)にはHow to play with EX-8 幼児用のおもちゃのようだ。しかしこの問題に問うのは、一語の穴埋め。

Children (    )three years old should not use EX-8.

残念ながら、問題を掘り起こし、たくさん書かせたり、話させたりする受験生の本当の英語力を試すレベルになってはいないと思う。これでは、たくさん話せない中学生しか生まれないだろう。

(8)では、日本人の平均寿命について興味深い記事を取り上げている。男は80.21歳。女性は86.1歳。生きている間の27年間は寝ている(1日8時間で計算)
さらに22時間は笑い(smile and laugh )の通算時間、150日は(surprised)。また6年間は携帯スマホの時間。いろいろ突っ込みたくなる話題でタイムリーだ。ところが、ここでもまた問題は、 内容の正誤の選択などでお茶を濁すような問題に変わり果てている。あえて、本質をつかむ問題を避けて、意識の低い「簡単採点方式」の問題に変えている。

こうした問題作成をしている限り、グローバル人材育成では、他国とは大きく離されるばかりではないか。