ピーチ、ANA子会社化の衝撃(2)「兄弟」関係どうなる ?

2017年03月07日 06:00

>>前回の記事「ピーチ、ANA子会社化の衝撃(1)」はこちら

ピーチ・アビエーションは国内で3社が競う格安航空会社(LCC)のなかでも、「やんちゃ」かつ優等生的な存在である。大手航空会社ANAホールディングス<9202>の出資を受けつつも、欧州最大手のLCC、ライアンエアーをお手本に独自の経営スタイルを追求。ANAの100%子会社であるバニラ・エア、日本航空<9201>が33%出資するジェットスター・ジャパンと比べて好成績を収めてきた。ピーチがANAの子会社になると、兄弟間のバランスがどう変わるのかのも焦点となる。

営業益61億円、断トツの収益力

各社の開示資料などを元に筆者作成

上のグラフは国内LCC3社の前期決算をまとめたものである。(ピーチとバニラ・エアは2016年3月期、ジェットスターは2016年6月期)。売上高はジェットスターが522億円と首位、2位のピーチが479億円、3位のバニラ・エアが217億円と続くのに対して、営業利益はピーチが61億円とダントツの首位。バニラ・エアの約15億円、ピーチの13億円を大きく引き離した。

売上高営業利益率はピーチが12.9%と唯一の2ケタを記録。バニラ・エア(6.9%)、ジェットスター(2.5%)を大きく上回っているだけでなく、親会社であるANAホールディングス(7.6%)も凌駕している。

コンセプトは空飛ぶ電車、幅広い需要を喚起

ピーチの高収益の秘密は高い搭乗率と徹底したローコストオペレーションにある。ピーチのコンセプトは「空飛ぶ電車」である。飛行機と言えば、たまにしか利用しない高い乗り物だったが、これを電車のように安く普段使いができる乗り物にしようという意味である。

国内線は14路線を運営し、通常運賃は例えば、大阪(関西)–札幌(新千歳)は4890円からと1万円を切る運賃が中心。飛行機を使った日帰り旅行という新たな市場も生み出した。女性をメインターゲットとし、乗客の3割近くが20~30代の女性という。国際線もアジア路線を中心に12路線を展開。訪日客の増加も追い風になり、外国人搭乗率は7割を超えているという(出所:3月1日就航5周年プレスリリース)

この結果、2016年3月期の搭乗率は86.7%とバニラ・エア(85.3%)、ジェットスター(83%)を上回る好成績を収めている。

コスト削減徹底、チェックイン機を段ボールに

1旅客あたりの営業費用をみると、ピーチは9178円とジェットスター(9776円)よりも6%ほど安い。使用する機材はエアバスのA320に統一し、整備や訓練に関わる費用を削減。関西国際空港に設置する自動チェックイン機を段ボール製にするなどして無駄なコストをかけないようにしている。

(出所:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/2468…

この結果、ピーチの1旅客あたりの売上高は1万536円とバニラ・エア(1万2889円)よりも18%安いにもかかわらず、1旅客あたりの営業利益は1358円と3社で最も高くなっている。

バニラとの競合路線、子会社化で見直しか

1旅客あたりのマージンをいかに高めるかは経営上、非常に重要である。LCCはいくつかの路線では競合し、価格競争が激しくなっているからだ。

以下はピーチとバニラ・エアの就航路線をまとめたものだ。

両社のホームページより筆者作成、一部路線は開設予定も含む

国内線では大阪(関西)ー東京(成田)、東京(成田)ー新千歳、東京(成田)ー那覇の3路線、国際線では大阪(関西)ー台北、那覇ー台北の2路線で、ピーチとバニラ・エアは競合している。羽田ー台北(ピーチ)、成田ー台北(バニラ・エア)も競合しているとみることができるだろう。このうち、ピーチは3月26日より、東京(成田)ー新千歳、東京(成田)ー那覇の2路線を廃止する予定だ。

これまで、ピーチはANAへの出資比率は3割強にとどまっていたため、ピーチは独自の戦略に基づき、自由に路線を開設することができた。今後、ANAがピーチ株を追加取得すれば、グループに2つのLCC子会社が生まれる。これまで以上に、ピーチとバニラ・エアの路線展開の住み分けを考え、無用な競争を避けるよう、ANA側がピーチへの関与を強めることも予想される。例えば、国際線でもピーチとバニラ・エアで競合する台北線をどちらかに任せ、バニラ・エアの収益性を改善させるという案も考えられる。

ANAはピーチ株の追加取得に投じる304億円で、成長著しいピーチを連結決算に反映させることが可能となるばかりか、ピーチとバニラ・エアの効率的な一体運営を進めてグループのLCC事業の収益力を強化できるーー。ピーチ子会社化の背景にはそんなANAのしたたかな戦略が透けて見える。

文:M&A Online編集部


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年3月6日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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