韓国敗戦の波乱開幕 ! “二重国籍”が奇跡を生むWBC

2017年03月07日 06:00

4回目となる野球の国・地域別対抗戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が6日、ソウルで開幕。強豪の韓国が、なんと初出場のイスラエルに延長十回の末、1−2で敗れる波乱の幕開けとなった。日本はきょう7日、強豪キューバを相手に東京ドームで初戦を迎えるが、国際大会では、甲子園に棲む魔物もビックリ(?)の恐ろしさが潜んでいることを改めて示した。

野球記者を数年やったことがあるとはいえ、大半の日本人と同じく、私もイスラエルが野球をやっていることは今大会まで聞いたことがなかった。が、海外野球に詳しい石原豊一氏のレポートによれば、アメリカのユダヤ資本投下で創設されたプロリーグが、2007年の1シーズンだけ開催され、元中日のネルソン投手も在籍経験があるのだという(ネルソンといえば拳銃の実弾を所持したままキャンプ地の沖縄入りして空港で逮捕されたのが懐かしい)。

WBC2017 – WBC初出場のイスラエルの謎に迫る過去に存在したプロリーグの実態とは!? – スポーツナビ

イスラエル代表28人のうち、同国国籍を持つのは…

イスラエルの中心選手、マーキー投手(パドレス時代、Wikipedia)

プロリーグがあるとはいえ、これまで国際大会の実績など皆無に等しい。それでも今回、初出場にこぎつけ、北京五輪では金メダルを獲得したこともある韓国を破ったというのは、もちろん、それなりのレベルの選手がいるからだ。登録選手28人の大半は米マイナーリーグ所属選手で構成されているものの、中には、この日、先発した通算124勝のジェイソン・マーキー投手らメジャー経験者も数名いる。

しかし、彼らはサッカー代表のように全員がイスラエル国籍ではない。それどころか、マーキー投手をはじめ、28人中27人がユダヤ系のアメリカ国籍のようだ。野球に詳しい人なら先刻承知のことだが、WBCはオリンピック競技から野球が外れたことを受け、世界各地への野球普及を建前に出来た大会だけあり、アメリカやドミニカ、日本などに限らず、世界各国から参加してインターナショナルな大会として育てていくためには、国籍要件を敢えて非常に緩くしている。その代表国の国籍を持っていなくても、出場国で生まれただけの者や、両親のどちらかが出場国の国籍を有していたり、生まれたりしていたりする者についても認めている。さらに、パスポートを申請する程度で認められるケースもあるようだ(参照:オランダ・イタリア快進撃の秘密!?WBC出場選手の国籍規定が緩いわけ | SPORTS セカンド・オピニオン | ダイヤモンド・オンライン)。

移民国家アメリカなのでルーツは多彩だ。たとえば第1回大会では、ドジャース時代の野茂英雄投手の女房役でおなじみだったピアッツア捕手は、父方のルーツがあるイタリアから出場。前回大会では、オランダが、カリブ海にあるオランダ領キュラソー出身のアンドリュー・ジョーンズ(元楽天)、ウラディミール・バレンティン(ヤクルト)らを擁してベスト4に勝ち上がった。

2013年大会予選でフィリピン代表で出場した中日・小川龍也投手(Wikipediaより)

日本の国籍を持ち、日本の学校で育ったプロ野球選手で、国外の代表から出場したケースとしては、フィリピン人の母を持つ中日の小川龍也投手が前回大会の予選でフィリピン代表として登板した。また、実現はしていないが、もしイランがWBCに出るようなことがあれば、イラン人の父を持つダルビッシュ有投手が出場することは理論上可能だ。

競技によって異なる国籍要件

このように、WBCでは国籍要件が緩く、いわば、カッコつきの表現ながら、出場選手たちの“二重国籍”を認めているとも言える。サッカーのように世界各地で普及しきっている競技だと、国籍要件はなかなか厳格で、ある国でA代表を一度経験してしまうと、他国のA代表キャップを付けることはできない(多重国籍の人は片方の国のA代表しかプレーできない)。一方、ラグビーでは、日本国籍を持たなくても3年以上、日本に定住(日本のチームでプレー)していれば、日本代表に選ばれることができる。競技の国際的普及度や、競技団体の考え方などによって、国籍に対する捉え方は多様だ。

WBCの国籍要件は良い意味でアバウトであるからこそ、昨日のイスラエルが韓国から金星を上げる“ジャイアントキリング”も上げる現象がたまに起きやすくなり、野球途上国において国民の注目を集め、普及を促す効果も出てくる。

大相撲については日本の伝統を固守する文化的側面と、モンゴル勢台頭等“ウィンブルドン化”の波を警戒して「1部屋につき外国人力士は1人」と、外国人力士の台頭を制限する方向になっている。報道においても、かつては「日本人横綱」としていたのに、歴代の横綱の中に在日コリアンがいたものだから、最近はポリコレ的配慮から「日本出身横綱」などと不思議な表現をして、読者・視聴者の困惑を呼んでいるが、実力主義のスポーツにおいて、あまり国籍を重視し過ぎるのもどうなのだろうか。

「政治」と「スポーツ」は違う

ちなみに、最近、某まとめサイトにて、SEALDsシンパとみられる、そっち界隈のアカウントが『世界で当たり前の二重国籍を糾弾した「アゴラ」編集長』などと筆者を中傷したページを、知人からの通報で見かけたが、民間人、スポーツにおける国籍についての私の捉え方はこのように柔軟であり、その中身の的外れぶりと、作った人間の視野狭窄ぶりに大いに失笑してしまった。

しかし「政治」という名の競技に関しては、国益を預かる政治家が二重国籍だった場合、領土問題等の国益がぶつかる場面で利益相反行為をされてしまっては、実害は大きい。なんでもかんでも容認すればいいものではないという、ただそれだけのことだ(参照:拙著「蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?」)。

話は最後にやや逸れてしまったが、侍ジャパンが望む4年に1度の大勝負、私自身はかつて侍ジャパンの公式サイトにて、小久保監督にインタビューさせていただいた縁もあり、大いに期待しております。

蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? - 初の女性首相候補、ネット世論で分かれた明暗 - (ワニブックスPLUS新書)
新田 哲史
ワニブックス
2016-12-08
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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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