預貯金は遺産分割の対象となる

2017年03月08日 06:00

暮れも押し迫った平成28年12月19日に最高裁判所にて相続に関する重要な判断がなされました。
それは「可分債権である預貯金は遺産分割の対象とはならない」としていた従来の判例を変更し
「預貯金も遺産分割の対象となる」としたものです。

本来、相続財産というのは相続人に包括的に承継され、相続人が複数名いる場合には
遺産分割によって具体的な相続分が確定するまでの間は、各相続人間の相続分に応じて共有されるとするのが原則です。

ただし、その例外として金銭債権に代表される可分債権は遺産分割を経ずとも、
相続開始に伴い、当然に共同相続人の相続分に応じて直接承継されるものと判断されてきました。

特に我々の身近なところである預貯金も
預貯金払戻請求権たる金銭債権として同様に考えられてきました。

さて、そう考えるとどんな問題が生じるのでしょうか。

例えば、相続人がX、Yの2名で法定相続分はそれぞれ2分の1。
遺産は建物1000万円、預金4000万円、
他生前にYが生計の資産として特別受益となる5000万円の土地を受け取っていたとします。

まず相続分の算定基礎となるみなし相続財産ですが、
建物1000万円と預金4000万円に特別受益の5000万円を加えた1億円となります。

そうすると具体的な相続分は、Xは1億円の2分の1の5000万円。
Yは1億円の2分の1の5000万円から特別受益分の5000万円を差し引いた0円となります。

ところが預貯金は遺産分割の対象外であるという従来の考え方をあ てはめると
預金は法定相続分で当然に分割承継されるため、
Xが2000万円、 なんとYも2000万円取得することになります。

すると結局Xは建物と預金で計2500万円、
Yは預金と特別受益分の計7500万円を取得するという結果にな ってしまいます。

これでは現金と金銭債権の預貯金という違いだけで大きく不公平な結果が生じることになりかねません。

やはり評価が確実で利害調整にも使いやすい預貯金を含めた上で具体的な遺産分割を行った方が公平で妥当な解決になるという手続 上の要請と、
家庭裁判所の審判や一般実務においても相続人全員の合意があれば預貯金の遺産分割も認められているとい うこともあり、
判例もそういった諸事情に歩調をあわせたものと考えられます。

文:司法書士法人・行政書士法人 星野合同事務所
Vol.117 2017.1.31 メールマガジンより転載


アゴラ編集部より:この記事は「M&A Online」2017年3月7日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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