米国はなぜ情報アクセシビリティ基準を改正したのか

先の記事『米国がアクセシビリティ技術基準を改定する』で説明したように、米国連邦政府は政府調達に適用する情報アクセシビリティ基準を改正した。改正を主導したのは連邦アクセスボードである。ボード委員は大統領によって任命され、事務局が活動を支える。事務局の責任者David CapozziのインタビューがFunkaから公開された。インタビューの要点を和訳して紹介する。

アクセスボードは、1998年に電気通信機器に関するガイドラインを発行し、2000年に情報アクセシビリティ基準を公開した。基準策定の根拠法(リハビリテーション法508条と連邦通信法255条)は、技術の進歩・変化を反映して基準を定期的に見直すように要求している。今回はその要求に応える初めての改正である。

改正基準はアクセスボードが組織した諮問委員会からの意見に基づいているが、諮問委員会には産業界・障害者団体・政府機関など幅広く関係者41人が参加した。欧州委員会・カナダ・オーストラリア・日本からの国際代表も含まれた(僕は日本代表を務めた)。諮問委員会の原案に対して637件のパブリックコメントが寄せられ、7回の公聴会が開催された。

最も重要な変更点は、その時点で使用されている製品個々に規定するのを止め、「視覚による情報提供には音声を付加する」といった「機能に基づく要件」に置き換えたことである。これによって、技術進歩があっても基準を改正する必要がなくなった。新基準にはWeb Content Accessibility Guidelines 2.0が参照され、また、EN 301 549「欧州におけるICT製品およびサービスの公共調達アクセシビリティ要件」など、国内外の基準と整合している。国際整合によって市場競争が促進されアクセシビリティ機能が向上する。

各省庁には2018年1月までの猶予期間が与えられている。また、過去の調達品に遡って新基準が適用されないように、セーフハーバーの規定が設けられている。各省庁は適切な調達手順を採用し、職員への訓練機会を提供する。司法省は2年ごとに実施状況を点検し報告書を発行する。最新の報告書は2012年に発行された。2001年6月21日(旧基準の発効日)以降、140の行政訴訟と7件の民事訴訟が提起され、連邦政府はそれに対応して改善を図ってきた。