シャープは本当に復活したのか ?

2017年03月16日 06:00

画像出典:シャープ公式サイト(http://www.sharp.co.jp/corporate/news/161101-a.html)

東芝が上場廃止危機でもがき苦しんでいる中、一足早く経営危機に陥り、鴻海に買収されたシャープが復活の様相を見せている。

戴正呉社長は、産経新聞のインタビューに「5月中旬に予定する中期経営計画発表後、速やかに東京証券取引所1部に上場申請する」と語っており、シャープの経営再建が順調であることをアピールしている。

株式市場もシャープの復活を好意的に受け止めており、3月14日に2013年以来の株価400円台を回復し、3月15日には年初来高値の438円を付けた。

このままシャープは順調に復活し、「世界の亀山ブランド」で栄光を築いた時代を取り戻すことができるのか、考えてみたい。

鴻海流の人事改革はお見事

「東芝さん、上場廃止でいいじゃない」で書いたように、経営危機に陥ったシャープは鴻海への売却を決めたが、出資額を1000億円以上減額されるなど、翻弄され、買い叩かれてしまった格好だ。

しかし、経緯はともかく、戴社長による人事制度の改革は素晴らしい。

3月13日に社長就任後の初めての記者会見が開かれ、戴社長の口から様々な人事制度改革が明らかになった。

ボーナスは社員の平均は年4ヶ月とそこまで高くは無いが、貢献に応じて年1ヶ月〜8ヶ月と変動する、これまでの日本企業の常識に反するメリハリの効いたものになっている。

私の勤務していたメーカーの場合、圧倒的な実績を上げても3万円〜10万円UPすれば良い方だった。もっと差をつける企業もあるだろうが、流石に最大8倍は無いだろう。

「信賞必罰の処遇を徹底する」との宣言通りの内容であり、優秀な社員のモチベーション向上に繋がるだろう。

また、以前から発表されていた社長特別賞についてもインタビューでこう語っている。

金額は機密であり、公表できない。1、2万円程度のレベルでなく、もらってびっくりする額にしている」

これは私の推測だが30〜50万円ほどの金額ではないか。

なお、私はメーカー勤務時代、新人から9年連続で事業全体の発明王に輝いており、毎年4月に役員から表彰されていた。しかも、賞状だけでお茶を濁すその他の役員表彰とは違い、賞金が発生する名誉ある賞であった。その額、3万円なり。

賞金から税金(6千円)を払って、厚生年金額がUP(5千円)して、表彰式用のスーツのクリーニング代(千円)を払って、部署の仲間と鳥貴族(1万8千円)で飲んだらお終いであった。よってモチベーションは全く上がらなかった。(だからこそ、誰もそんな賞を目指さなかったとも思えるが)

なお、10年目(2015年度)も一位に輝いたはずだったが、元会社の同僚に聞くと表彰式に私の名前は無かったようだ。表彰規定の2016年4月1日にはまだ籍は有ったはずなのだが。

私の代わりに1位になった、同期のI君のモチベーションは上がったのだろうか。

よく日本の成果主義は破綻していると言われるが、それは成果主義まがいだったからだと私は思う。年齢や役職に関わらずボーナスで200万以上、特別賞で50万円以上の報酬があれば、モチベーションは確実に上がる。「人はお金では動かない」と言う人もいるが、本当にお金を貰えるならやる気が出るものだ。だって、人間だもの。

未だに深刻なシャープの人材難

戴社長による人事制度改革で、特に若手社員のモチベーションは上がっているだろう。しかし、まだまだ人材不足に苦しんでいるようだ。

シャープは経営危機で複数回のリストラを行った結果、大量の人材流出を招いた。その後遺症で深刻な人材難に陥っている。

これまでの希望退職の人数は6000人を超え、経営幹部もライバル会社であるジャパンディスプレイや日本電産に移ってしまった。

特に日本電産には元社長の片山幹雄氏と前副社長の大西徹夫氏が幹部として迎えられ、一般社員の転職者数も100人を超えている。同じ企業に100人の転職とは、これは凄い数字だ。国内の社員数が2万人弱のシャープ全体においては小さな数字に見えるかもしれないが、これは一つの事業部の技術者が丸々移動したと言える規模だ。日本電産からすれば、本来は数百億円はするかもしれない事業を無料で買収したようなものだ。

実際、戴社長も不満が溜まっているようだ。3月13日の記者会見では大西前副社長を名指しで「個人のキャリアは尊重するが職業道徳に反する」と批判している。

また、「シャープ従業員の平均年齢は50歳。これを45歳くらいに是正したいと思っている」とも語っていたが、これは衝撃的な発言だ。

新卒が22〜23歳で入社し、60歳で定年を迎える企業ならば、平均年齢は41歳くらいになるはずだ。これまでのリストラではベテランが意地でも踏み留まる一方、優秀な若手が大量に辞めたことがわかる。(実際、同世代のシャープ社員の転職話は飽きるほど聞いた)

2015年に年功序列制度を廃止し、管理職を半減すると発表したソニーの平均年齢が43歳である。そのソニーも「社員が年寄りばかりになって、かつてのソニーのようなワクワクするアイデアが出なくなった」と言われているのに、平均年齢50歳の集団に画期的なアイデアを期待するのは厳しい。

戴社長は2018年入社の新入社員を2017年から倍増すると表明している。だが、シャープの2016年の新入社員は121人である。2017年の新入社員の数は不明だが、多くて200人前後だろうから、400〜500人増える程度だ。

この新卒採用の規模では、幾ら優秀な新人を集めてやる気が出る人事制度で報いたとしても、効果が出るのは5〜10年後になるだろう。

シャープは新卒採用以外にも積極的に若手を採用し、劇的な若返りを図らないと、画期的な新事業を成功させることは難いだろう。

液晶テレビ・有機ELでの再建は疑問。画期的な介護ロボットなんてどうだろうか

また戴社長は今後の中核事業について、「液晶テレビの販売台数を約2倍の1000万台に拡大する」「有機ELが10年間に渡って、変色などの影響も出てくるのではないか。だから、いまは液晶テレビを中心に事業を展開している」と、短期的にはこれまでと同じ液晶テレビ・ディスプレイに注力する姿勢を見せている。

私は、これは甘い見通しでは無いかと思う。

シャープの液晶テレビ販売のピークは2010年度の1482万台である。しかし、ここ2〜3年の販売台数はピークのわずか1/3、500万台程である。世界シェアは4%と、トップのサムスン電子の24%、LG電子の16%は遥か彼方である。

そのサムスン電子とLG電子が大型有機ELテレビへのシフトを始めている中、液晶テレビを拡大すると言われても、今更感が強い。

もちろん戴社長は有機ELの生産にも言及しており、2000億円の投資を行うとのことだ。しかし、韓国勢が数千億円の投資を行い、世界シェアを独占している状況からどこまで挽回し、収益に結びつくかは不明だ。

そんな中、戴社長が語った「シャープはIoTの会社になる」という言葉に私は注目している。IoTはソフトバンクのARM買収でも注目されたワードだが、ビッグデータ・AI・VRと並んで「とりあえず言っておけば良いだろ」的なバズワードの気配が強い。

しかし、シャープの技術は本物のIoTを実現できる要素が揃っており、期待できる。

私は、既に発売中のロボホンやココロボに搭載されたロボット・AI技術、記者会見で発表した無人巡回を可能にする自動走行監視ロボット、IoTを駆使したホームアシスタントという技術を組み合わせて、本格的な介護ロボットが誕生することに期待している。

日本はこれから超高齢化社会に突入し、介護の人材不足が確実だ。もしシャープが世界初の全自動介護ロボットを開発することができたら、間違いなく大ヒットするだろう。

新生シャープには、液晶・有機ELといったこれまでの延長のイメージではなく、それこそ「ドラえもん」のひみつ道具を産み出すような、全く新しい分野での成功を期待したい。

参考サイト:THE PAGE現代ビジネスAV WatchAV Watchシェアブログ


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宮寺 達也
パテントマスター/アゴラ出版道場一期生

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