ウェブアクセシビリティ:進む世界と止まる日本

総務省が「みんなの公共サイト運用ガイドライン」を公表し、WCAG2.0レベルAAに準拠したウェブ等を2017年度末までに提供するよう公共機関に求めた。WCAGはWeb Content Accessibility Guidelinesの略称であって、2.0はバージョン2.0という意味で2008年に制定された現行の技術基準を指す。ガイドライン中の技術基準61項目は、A(25項目)、AA(13項目)、AAA(23項目)に分類されている。レベルAAに準拠するためには、AとAA合計38項目の技術基準を満たす必要がある。

WCAG2.0はウェブ技術に関する世界的な標準化団体W3Cで作成されたが、すでにW3CはWCAG2.1へのバージョンアップに動き出している。なぜバージョンアップが必要になったのか。W3Cは、弱視および認知と学習障害を持つ人々に対応し、また、モバイル環境でのアクセシビリティ要件を定めるためと説明している。近年、人々はモバイルによってウェブにアクセスするようになった。モバイルはPCに比べて画面が小さく、不出来なウェブは情報が探しにくく、スクロールばかりで利用しにくい。WCAG2.1はこれに対応するというわけだ。今のところ、2018年6月に公開される予定である。

WCAG2.1の先には何が待っているのだろうか。それがシルバータスクフォース(Silver Task Force)である。人工知能(AI)の発展によって、今までなかった方法が障害者などへの支援に利用できるようになってきた。それら最新技術を反映することで、ガイドライン自体がより使いやすくなり、より多くの障害に対応できるようになり、より簡単にガイドラインに準拠できるようになるとの期待が、シルバータスクフォースの設置の根拠となっている。

世界は急激に動いているから、WCAG2.0で止まっているとわが国は取り残されてしまう。ウェブアクセシビリティ専門家はWCAG2.1やシルバータスクフォースでの標準化活動に積極的に貢献し、また、情報を収集しておく必要がある。