トランプ相場が失速した背景を探る。アベノミクス相場との類似性

2012年11月あたりからのドル円や日経平均株価の急速な上昇は、アベノミクスによるものとされた。リフレ政策を掲げた安倍自民党総裁は12月の衆院選で政権を取り戻し、これがきっかけとなって相場が大きく動いた。しかし、相場が動いた背景にはそれまでの急激な円高とそれに伴う株安の反動という側面が大きかった。あくまでアベノミクスという政策そのものが相場を動かしたのではなく、それをひとつのきっかけとしてドル円や東京株式市場でのショートカバーの動きを強めた。ヘッジファンドなどがそれを先導したとされている。

昨年11月からのいわゆるトランプラリーとかトランプ相場と呼ばれた市場の値動きも、この2012年11月からのアベノミクスと似通った動きとなっていた。トランプ相場もトランプ大統領の経済政策などへの期待によるドル高、株高との見方が強かった。しかし、これもまたアベノミクス同様に反発するエネルギーが溜まっていたことが相場を大きく動かしたといえる。

昨年当初の世界の金融市場は大荒れとなっていた。中国を中心とした新興国経済への不安感や原油安により、いわゆるリスクオフの動きを強めた。たとえばドル円でみると、2016年初に120円台にあったのが、6月末には100円割れとなった。これは新興国リスクに続いて、今度は昨年6月23日の英国の国民投票によりEUからの離脱が決まったことが大きなショックとなったためである。しかし、英国ショックは一時的なものに止まり、さらに不安視された米大統領選挙でも予想外のトランプ氏の勝利はリスク要因というよりも期待要因に変化した。

ドル円は米大統領選の結果、101円台に一時下落したがそこから切り返し、12月15日には118円台に乗せた。実はドル円に関してはここでピークアウトしている。

また、米長期金利も大統領選挙前の1.8%台から12月14日に2.60%近くに上昇したが、この2.6%が壁となった。米長期金利については3月FOMCでの利上げ決定もあり、3月に再度2.6%台をつけるが、やはり跳ね返されている。

米国株式市場に関しては3月1日までは三指数ともに過去最高値を更新するなど絶好調となっていたが、ここから上値が重くなっている。3月1日のトランプ大統領の演説に新鮮味はなく具体性も欠くなどしており、このあたりから期待が剥げつつあった。相場の先導役のひとつとなっていたゴールドマンサックスの株価動向をみるとダウ平均などよりも、ピークアウト感が伺えるようなチャートとなっている。

そして昨年のリスクオフ相場の大きな要因となっていた原油先物の動きについては、すでに昨年2月あたりでボトムアウトしており、WTIは30ドル近辺から6月に50ドル台を回復した。その後売り買いが交錯するが、11月の米大統領選挙を受けて今年初めに55ドル台に上昇した。しかし、ここにきて47ドル近辺まで下落している。

これら一連の動きを見る限り、ひとまずトランプ相場は、アベノミクス相場と同様に原動力となったショートカバーのような動きが収まったことで、ピークアウトした感がある。ここからはあらたな材料を改めて模索するような展開となりそうである。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年3月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。