青少年のネット利用とモラル教育の課題

LINEが『青少年のネット利用実態把握を目的とした調査 中間報告』と題する、神奈川県と東京都の児童生徒6509名を対象とした大規模調査の結果を発表した。LINEを使っていて実際に体験した嫌なことととして「知らない人から「友達追加」をされた」27%、「既読無視」11%、「話の最中にスマートフォンや携帯を触っていた」10%が挙がり、一方、されたとしたら嫌だと感じることは「嘘を広められた」26%、「LINE上で自分の知られたくない情報が流された」26%、「入っていないグループトーク内で自分の悪口を言われた」24%となったという。後者に人格攻撃的な項目が多く挙げられたことは興味深い。

ネットが安全に利用できていると回答した児童生徒は嫌なことを体験した割合が少ない。ネットが安全に利用できていると回答した児童生徒1808名の81.4%がスマホの使用ルールを保護者と、または家庭内で話し合って決めている。これに対して、あまり安全に利用できていない89名と安全に利用できていない40名では、保護者などと話し合って決めた割合が76%、55.6%と下がっていく。

LINEの中間発表には統計的な有意性の検証などがない。LINEは「結果について一定の学術的見解が示せる段階で最終報告を作成します。」としているので、それが待たれる。

先に『情報活用能力を伸ばすには教育改革が必要』という、文部科学省が発表した『情報活用能力調査(高等学校)調査結果』について考察した記事を書いた。調査では、生徒の情報活用能力はレベル1からレベル7に分けられている。レベル7の生徒の特徴の一つが「情報モラルと情報セキュリティを理解し,著作権や肖像権などに関わる法的責任を具体的に説明することができる。」である。レベル3ではこれが「基本的な情報モラルと情報セキュリティを理解している。」に低下し、レベル2と1は理解していない。レベル7の生徒は全体の1%、6が10%、5が26%,レベル4が31%,3が19%,2は9%,1は4%であった。レベル3も含めると生徒全体の三分の一は情報モラルや情報セキュリティに関する理解が足りない。情報活用能力強化の前提としてこの部分の教育を充実するとともに、LINE調査から読み取れるようにスマホ利用について保護者等が指導していくのが大切である。

ところで、文部科学省から『高等学校情報科担当教員への高等学校教諭免許状「情報」保有者の配置の促進について(依頼)』という文書が教育委員会に対して昨年3月3日に発出されている。そこには、「情報」科目を「情報」免許を持たずに教えている教員が27.6%も存在すると書かれていた。他の科目の教員が片手間で教えるのでは、情報モラル・セキュリティ教育が充実するはずはない。子供たちをネット被害から守るには、教員の配置から取り組みなおす必要がある。