森友学園問題で考えたファクスの破壊力

常見 陽平

それにしても、ファクスである。「若者のファクス離れ」は、まったく問題にも話題にもなっていない。彼らは「離れ」るどころか、交わってすらいない。ファクスは新語に近いことだろう。Fワードと、性交を意味する言葉が交わったような、卑猥な響きすらある。なんだ、それは、と。いや、HIPHOPのLyricにすら聴こえてしまう。

いまさら、ファクスが注目されるとは思っていなかった。先週、行われた国会での証人喚問で籠池泰典氏は、国有地をめぐる相談に「安倍昭恵夫人サイド」が送ってきたというファクスを読み上げてみせた。3月24日付の日経電子版によると、安倍昭恵首相夫人付の政府職員が籠池泰典氏に送ったファクスの要旨は、小学校敷地に関する国有地の売買予約付定期借地契約に関し、財務省本省に問い合わせ、国有財産審理室長から回答を得た。大変恐縮ながら、国側の事情もあり、現状では希望に沿うことはできないようだが、引き続き、当方としても見守っていきたい。本件は昭恵夫人にもすでに報告している、という内容のものだったとされている。

森友学園問題の決着もそうだが・・・。この問題の裏で、様々な法案が審議されており、それらはメディアではあまり取り上げられない。この問題の決着は見守りたいが、この件や豊洲の件に終始し、国の今、そこにある問題や未来に関わる問題に光が当たらないのは問題だ。マスメディアも、ブロガーも森友問題や築地問題に埋もれている諸問題を伝える努力をしなくてはならない。先日、電話出演したTBSラジオ「Session-22」では、森友学園問題が話題となる中、埋もれている「職業安定法改正」や「働き方改革」についてコメントした。よろしければ、聴いて頂きたい。

話を元に戻そう。この件に関して、個人的に神がかっているものを感じたのは・・・。「ファクス、すげえ」というものだった。しかも、自分の個人的な体験に重なっており、興奮したのだった。というのも、私はファクスに関するサービスの営業や企画を担当していたことがあり。ちょうど20年前、新社会人になり、配属されたのがリクルートのファクシミリネットワーク部門だったのだ。現在はリクルートグループを離れ、NEXWAYという会社になっている。

新人の頃、電子メールが普及する時代だからこそ、ファクスを使いこなすコツという、今思うと無理筋な話を顧客に納得してもらうためのトークを叩き込まれ、使いこなしていたのだ。

「メールは消されますけど、ファクスは必ず机の上に置かれます。だから、確実に読まれるんですよ。だから何かを伝えたいときには、絶大な威力を発揮するんですよ」
なんていうトークで営業していた。「破られたら終わりだろ」と思いつつ。

もっとも、たしかに開封され目にとまるなど、ファクスの威力はそれなりにあり。他にも、簡単にチェックをつけて返信をしやすいなどのメリットもある。通販などではこれは、便利で。商品の案内を送れば、まとめてチェックして返信できる。宛名を印字しておくことで、送付先の担当者の変更などを吸い上げることができるというメリットまであった。これを営業のチャンスにするという技も。

いまで言うブラック企業みたいな会社は、社長が直々にその日の想いを朝、毛筆で書き、ファクスで全拠点に一斉送信するなんてことも行っていた。それを、各拠点で気合いを入れて読み上げるという儀式があった。

いや、驚きの事実は、前出のNEXWAY社の社員によると、ファクスの通信量はメールの普及で一部は落ちたものの、いまだに使われ続けているということである。未だに、出版社が書店に新商品の案内を送るなど、企業が小売店に何かを伝える際にはファクスが活用されていたりする。今回、行う院内集会も、政治家からの申込みは、ほぼ皆、ファクスだった。

今回の件も、ファクスは保存でき、証拠が残るというメリットが証明されたといえるだろう。最近は、LINEのスクショ流出などがスキャンダルの発端となったりするわけだが。ファクスが健在で何かこう嬉しかった(おい)。20年前の新社会時代のことを証人喚問で思い出すなんて。


最新作、よろしくね。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。