FAXは滅びぬ ! 何度でも蘇るさ !

2017年03月28日 06:00

写真ACより

森友学園の問題で「昭恵夫人付きの官僚が森友学園にファクスを送付した」と聞いた時、「ああ、やっぱりまだファックスって現役なんだなあ」としみじみと感じた。

アゴラでも常見陽平氏が「いまさら、ファクスが注目されるとは」という記事を投稿されているが、実際に事務機器メーカーでファックス製品を設計していた私は、ファックスがまだまだ利用されていることを良く知っている。

なぜスマホやSNSがこれほどまでに進化した2017年においてもファックスは現役であり続けるのか、これからファックスはどうなるのか、解説したい。

日本で安定した人気を誇るファックス

日本でファックスが実用化されたのは1928年、昭和天皇の即位礼を京都から東京に伝送したときだ。100年近い歴史を持つ。

常見氏が書かれているように、産まれた時からPC・ケータイが存在し、スマホをバンバン活用している若者にとって、ファックスを使う理由が無いだろう。書類や図面はPC・スマホで作成して、そのままメールなりSlackなりで添付すれば良い。

若者にとってファックスは、ビデオテープや黒電話のような「歴史上のもの」だろう。実際、産業遺産の収集で知られる米国のスミソニアン博物館がファックスをコレクションの一つに加えた。

しかし、日本ではファックスは安定した需要がある。私は事務機器メーカーで、低価格の複合機(プリンタ、コピー、スキャン、FAXの4つの機能を持つ)の開発に取り組んでいた。複合機には、大きく分けて2つのエレキ基板がある。モーターやレーザーを動かし、紙に正確にトナーを描くためのエレキ基板。PC接続やコピー、ファックスを制御するための、USB・LANケーブル・モジュラージャックを搭載したエレキ基板である。そして、ファックスのための基板の方が断然高コストなのだ。

私はコスト削減のため、「ファックスの機能を削りましょう」という話を何度もしたことがある。(特に自分が設計した商品でファックスのトラブルが起きた時は、強烈に訴えた)

だが、企画から返ってくる答えはいつも同じであった。

「ファックスが無いと売れない」

「ほんまかいな、ジョブズなんてIPhoneでフラッシュを削ったけど成功したんやで」と疑いを持っていた私であったが、調べれば多少は納得した。

経済産業省のデータによると、ファックスは1998年から2009年まで安定して300万台強を出荷している。

(グラフに実際に私が設計した複合機が登場してるぞ、わかるかな?)

 

1 FAX国内出荷台数グラフ(出典:複写機等の現状 – 経済産業省)

ビデオテープのように、HDDレコーダーというより便利な製品が登場したから販売がどんどん減っている状況では無く、PCの普及に伴ってむしろ拡大している感すらある。流石にこの数字を見たら「まあ、もうしばらくはファックス搭載しとくか」という感想を抱いた。

ファックスは迷わない

では、なぜファックスは日本で根強い人気を誇っているのか?

私は事務機器メーカー時代に、販売会社出身のTさんに連れられて、何度か顧客訪問をしたことがある。

まず、お客さんが必ず言うことが、

「取引先にファックスを使用する会社があるので、辞めるわけにはいかない」

であった。確かにファックス機や複合機は2〜3万円で買えるのだから、1社でもファックスを使用している取引先があれば、辞めるデメリットが大きい。

実際、これまでに訪問したお客さんやビジネスでお付き合いのある会社は全てオフィスにファックスを置いていた。

では、ファックスを送信する方の会社は、なぜファックスを利用しているのか?

これも顧客訪問で実際に聞いたことであるが、

「操作が簡単。間違えることが無い」

であった。

「いや、メールでファイルを添付するのって簡単じゃないですか?」と質問したが、「できない訳じゃ無いけど、ファックスの方が簡単」と返ってきた。

そして今思い出せば、「簡単」より「間違えることが無い」に注目するべきであったと気づく。

そう、ファックスの最大の特徴は「操作を選択する機会が無い。だから、間違え無い」なのだ。

ファックスを送信する手順は、書類をセットして、電話番号を押して、送信ボタンを押す、である。この時、「押すボタンが予め固定されている」ということが大きい。

PCでメールを添付する場合、メールソフトを立ち上げ、アドレスを入力して、添付ファイルを選んで、送信ボタンをクリックする。

慣れた人にとっては簡単なことであるが、不慣れな人にとっては「ファイルを選ぶ」という選択がストレスになるようだ。最近、ジャーナリストの西田宗千佳氏による日本のテレビのリモコンを解説したツイートが話題になった。「高齢者は同じボタンが時によって役割が変わることを嫌う。はっきりした機能名ボタンを望む」(ツイート出所1出所2)という内容であるが、ファックスを選ぶ感覚も同じである気がした。

私が質問したお客さんは、PCの操作ができるし、メールでファイルを添付できることももちろん知っている。それでもなお、ファックスの方が直感的に使えて、安心できる機能なのだ。

手書き・ハンコ文化が終わるまでファックスは滅びぬ

そして、ファックスがさらに楽なのが、サイン書類を送付する場合だ。私もフリーランスになって様々な書類にサインし、ハンコを押してきた。その書類を送付する場合、確かにファックスは楽だった。

サイン書類をコンビニの複合機でスキャンしてPDFにして、PDFを自宅のPCで受け取って、メールで添付する。これは結構、めんどくさい。ファックスなら、コンビニで送付しておしまいだ。

芸能人の結婚や離婚、スマップの解散といったときにも、ファックスが活躍している。芸能人のコメントや事務所の発表がマスコミ各社にファックスで送付され、ニュースで放映される。これはやはり、「直筆のインパクト」を大事にしているからであろう。

日本では根強い手書き・ハンコ文化が存在している。書類を決済するために、なぜか手書きのサインを求められ、何なら手書き+ハンコを求められる。

私には手書きの署名やハンコが一体、何の証明になっているかさっぱりわからない。

まずハンコは誰でも買えるから、何の証明能力も無い。特にシャチハタNG、彫刻ハンコのみOKというのは、本当にわからない。

また、手書きサインも良く考えたら相手が私の筆跡を知っているわけでも無いし、私以外の誰かが代わりにサインしたとしても絶対にバレないだろう。これも何を証明しているのかわからない。

しかし、実際に相手が手書き・ハンコを求めてくる以上、対応せざるを得ない。ハンコの撤廃もまだなのに、手書きサインが撤廃されるのは遥か未来になってしまいそうだ。

この手書き・ハンコ文化が終わるまでは、「FAXは滅びぬ!何度でも蘇るさ!」だろう。しかし、いつかこう言われる日が来るかもしれない。

「日本の電機メーカーが滅びたのに、FAXだけ生きてるなんて滑稽だわ」

参考記事:Wikipedia日経新聞複写機等の現状 – 経済産業省


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宮寺 達也
パテントマスター/アゴラ出版道場一期生

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