雇用の流動化が働き方改革の本丸

政府は『働き方改革実行計画』を3月28日に決定した。メディアは、「残業時間の上限規制」と「同一労働同一賃金」が二本柱であると報道している。

働き方改革実行計画』を読むと、この二つ以外に多様な事柄が盛り込まれているのに気づく。その中には「雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援」という雇用流動性に関する項目もある。しかし、その中身は、「転職者の受入れ企業支援や転職者採用の拡大のための指針策定」「転職・再就職の拡大に向けた職業能力・職場情報の見える化」と、転職奨励策にとどまっている。

新経済連盟と文部科学省科学技術・学術政策研究所の共同アンケート調査『第4次産業革命下における人材育成』の結果が3月24日に公表された。そこから、新経済連盟の会員企業では雇用がすでに流動化していることが読み取れる。

アンケート回答者の多くは現在の会社での就業期間が短く、また、就業後数年以内に部課長職に就いている。彼らは、前職での経験や社外からの情報・アドバイスが現在の仕事に役立っていると実感している。

現在の会社では人手不足感が強いが、アウトソーシングよりも新人・若手・即戦力を新たに雇用したいと彼らは考えている。インターンの受け入れに積極的で、採用につながるケースも多い。

アンケート回答者は様々な職場を流動している。流動のきっかけは、アンケート結果によれば、チャレンジングな事業展開や多くのチャンスである。

アンケート回答者は政府が決めた転職奨励策よりも先を行っている。政府には、働き方改革を具体的に展開する過程でこのアンケート結果を参考にしてほしい。また、科学技術・学術政策研究所は、他の経済団体会員企業社員との比較分析なども進め、雇用の流動化を促進するための鍵を見つけ出してほしい。

雇用が流動化すれば残業の多寡で労働者が自ら会社を選択できる。雇用の流動化は能力に対応した雇用を生み、同一労働同一賃金の目標に近づく。