Fランク大学の学生とか関係無く、面接で採用するな

2017年03月30日 06:00

写真ACより

Storys.jpの「Fランク大学の学生を採用したらこうなった」という記事が話題になっている。

オチが衝撃なので、ネタバレは避けつつ簡単に内容を紹介したい。未読の方は、この記事を読む前に是非読んで欲しい。

内容は、Fランク大学出身だけど面接で好印象を残した学生を採用するべく、採用担当者が、「マーチ以上しか採用しない」という学歴差別主義者の人事室長とバトルしていくというものだ。

現代における採用の問題点がこれでもかと凝縮されており、この記事を巡って「採用担当者が無能」「やっぱり学歴は重要」「仕事と学歴は関係無い」と活発な議論が交わされている。

私も働き方に関する記事を幾つか書いてきたので、無視できない内容だ。そこで、Fランク大学の学生の採用はどうするべきだったのか、考えてみたい。

現実に学歴差別は存在する

まず記事に登場する「学歴と仕事の出来は比例しとる」「うちはマーチ未満はとらん方針やろ」「低学歴の奴は勉強する根性さえ身についていない怠け者や」という人事室長であるが、珍しい存在では無い。一部上場しているような規模の大きい会社では、一般的な考え方だろう。

人事は専門では無いので伝聞による論評になるが、昨今の新卒採用ではインターネットによって応募が簡単になったため、採用枠20〜200人に対して全国から何千・何万人の学生が応募してくる。これを全員面接していたら時間が全く足りない。そこで学歴フィルターを使って書類選考で大幅に削っていく。

記事にも「マーチ以上をターゲットにして採用活動を行うという方針の下、セミナーのお知らせは高学歴者に優先的に送っていました」と出てくるが、これも普通に行われていることだ。

その後、学歴フィルターを通った学生を1次・2次と面接をしていき、合否を決める。だが、学生の面接の受け答えなんてみんな似たようなものだ。だから、最後はやっぱり学歴が良い学生ほど有利になる。

なお、私は元事務機器メーカーの採用面接で「御社のDVD-Rドライブに魅力を感じ、開発に携わりたいと考えています」と言ったところ、

「内のDVD-Rは魅力的な事業じゃ無いと思うけど」

「DVD-Rがやりたいなら、松下に行ったら」

「松下よりソニーが良いんじゃない」

と散々な雰囲気になった。それでも内定を貰えたのは、間違いなく旧帝大(大阪大学)という学歴Aランク出身だったからだ。入社後も、同期には様々な大学の出身者がいたが、大半はマーチ以上の出身であり、いわゆるFランク大学出身者は見ていない。

私は、人種も、性別も、年齢も、血筋(親の資産)も、過去も、性格も、顔立ちも関係無く、人間は公平に評価されるべきとの理想を持っている。会社の採用についても変わらない。

しかし、現実に高学歴と言われる大学出身者が優遇される現状では、高校生にはできるだけ受験を頑張って、将来の選択肢を広げる努力をして欲しいと思う。

面接では何もわからない 

そして、私が「Fランク大学の学生を採用したら」で最も問題だと思った点は、学歴がどうのこうのではなく、「面接」で人物を判断しようとしたことだ。

先にも書いたが、学生の面接の受け答えなんてみんな似たようなものだ。「学生時代に頑張ったことは?」「課題は何でしたか?」「あなたはどんな役割を果たしましたか?」というテンプレートのような質問に対して、学生は予め準備してきた回答を元気よく読み上げる。よっぽどのミスをしない限り、面接での印象なんて大差無い。

私もあまり数は多くないが、新卒採用面接や中途採用面接の場に立ち会ったことがある。そのときに実感したが、20〜30分話をしたくらいではその人の本質は何もわからない。面接後に感想を求められたが、「何も言えねえ」であった。

さらに、採用担当者は1日に何人も面接するので、同じような「サークルでの活躍」「バイトでの活躍」「ボランティアでの活躍」を聞かされてうんざりしているだろう。だから、面接では「一言、印象に残ること」を言った人間が高く評価される。

記事では、Fランク大学の学生が「公認会計士の勉強をするためにダブルスクールを始めました」と語っている。恐らく、これが採用担当者に強烈に印象に残り、高評価を与えたのだろう。

はっきり言って、面接なんて話を盛るのも嘘をつくのも当たり前だ。そんな中、たまたま面接官の印象に残った者だけが評価される仕組みだ。

そう言えば、私も係長の昇格面接で似たような経験をした。特許や製品開発の実績をアピールした後、「何で特許をそんなに頑張っているの?」と言う質問をされた。

私は「仕事だからに決まってんだろ」という本心を押し留め、「母親がGoogleで私の名前を検索したら、私の特許を見つけたんです。それで母親が電話をしてきてくれたんです。それが嬉しくてモチベーションが上がりました」と回答した。

母親がGoogle検索をして電話をしたのは事実だが、それがモチベーションの源泉では無い。はっきり言って話を盛った訳だが、面接官には好評だったようだ。合格した後のフィードバックコメントでも言及されていた。

このように、嘘・大げさ・紛らわしいのオンパレードの面接なんかじゃ、その人の本質はわからない。私が心から尊敬している人物は、皆第一印象が悪かった。

尊敬するKさんはどこにでもいそうな係長だったし、親友Yは「なんで年齢が上ってだけで敬語を使わなきゃいけないんだ」と言う生意気で頑固な同期だったし、才能溢れる後輩Mはまともに返事しないコミュ障に見えたし、超優秀な先輩Sは何考えているのかわからない恐い人であった。

その人たちがもの凄い優秀で、人間的にも素晴らしいとわかり、心から尊敬するようになるまで半年〜1年は掛かった。私は彼らを面接で評価していたら、落としていたかもしれない。

流動的な労働市場で、何度でもトライできる環境を 

私はこれまで書いたように、人間の本質は学歴なんかでは決して決まりはしないから、Fランク大学の学生を差別することなく、実力のある若者に採用のチャンスを与えるべきだと思っている。しかし、たった数十分の面接で学生の実力を見抜くのは困難だ。

ならばどうするべきか。それは、もっと時間を掛けて人の本質を評価し、ダメだったら何度でもやり直せる仕組みにすることだと思う。

まず簡単にできるところでは、インターンの拡充があるだろう。数日でも職場を体験することによって、適性をより確実に判断できる。少なくとも5日でばっくれると言うことは無くなるだろう。

さらには、会社が社員を解雇できることを容易にして、雇用を流動化し、自分に合う会社を探しやすくするべきだ。

採用の現場でもそういう考えが出てきているようで、東洋経済オンライン(配信元:AERA)に「企業の採用担当者が語る「面接は機能不全」と言う記事がある。ここに出てくるIT企業の採用担当者の意見が、ズバリであった。

乱暴かもしれないけど、出口の部分、つまりもっと簡単に会社が社員を解雇できるようにしないとダメじゃないかとさえ思います。学生も「就職したら一生」の前提だと慎重になるし、嘘でも盛ってでもなんとか入ってやろう、となる。企業側もヘンなやつを採って辞めさせられないと大変だし、確実に稼いでくれるやつを採れということになって、化かし合いになる

Fランク大学の学生を採用した担当者は、今回の結果にメゲることなく、学歴差別の無い採用を実現して欲しい。しかし、そのためには面接以外に学生を評価する仕組みを考えることが不可欠なことを忘れないで欲しい。


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宮寺 達也
パテントマスター/アゴラ出版道場一期生

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