尾木ママが取り残された「取り残される日本の教育」

2017年04月05日 18:00

教育評論家の尾木ママこと尾木直樹氏の「取り残される日本の教育 わが子のために親が知っておくべきこと」という著作を読みました。氏はブログでしばしば憶測を書いては謝罪をしていますが、これが学校教育への誤認ともなるとさすがに怒りがふつふつとわいてきたので、同書の感想を書くことにしました。

日本はイギリスなのか?

教育に競争原理を導入しても子どもの学力は向上しないし、学校の学力レベルも上がらないことは、世界ではすでに“常識”となっています。1988年のことです。イギリスが競争原理を導入した教育改革に乗り出し、子どもたちは競い合うことで、成績のよい子と“落ちこぼれ”に分けられてしまいました。こうした失敗例があるにもかかわらず、いまだ日本では、イギリスの失敗例と非常によく似た教育システムを続けています。(同書P50)

そもそも、日本の学校に競争原理は導入されたのでしょうか。むしろ少子化で、学生を集めるため推薦入試など適切な競争がなされないほうが問題ではないでしょうか。イギリスは階級社会の結果としての学歴社会だし、それを日本にあてはめるのはかなり無理があると言えます。

教師の善意も悪意に見える

いまどきは、「お子さんは理解がおそいようなので、塾に行ってください」と、親が学校の教師から言われるケースも珍しくないそうです。こんなことは教師の責任放棄にほかならないのですが、悲しいかな、こういう言葉を平気で口にする教師が現実にいるということです。(同書P62)

これは学校教育の限界を認識した教師の善意ともとれる発言です。むしろ「なんでもやります」と言ってなんにもやらない教師がいかに多いことか。その結果が、「いじめは絶対に許さない」と言っている教師自身がいじめの隠ぺいに走るといった事例にも顕著に表れています。現状の学校で、個々の子ども学力をあげることは不可能です。それは以下のように著者も認めています。

県や市の教育委員会、あるいは国かなどから送付される調査関係は年間2000件。九州のある県では4000件以上にも上ったというウソのような本当の話もあったほどです。教師は授業の合間などを縫って、こうした調査所への回答や報告書のたぐいを作成して送信するなどの雑務にも追われていることになり、まさに分刻みのスケジュールで動いていると言っても過言ではないのです。(同書P146)

根拠なき「ゆとり」肯定

「ゆとり」という名称は、従来の知識・理解の偏重であった「詰め込み教育」からの方向転換を図るという意味合いを込めてつけられたものでした。結局、昔ながらの“(知識偏重型の学力がいちばん大事)”という考え方に帰着することになってしまったのです。(同書P93)

日本のいつの時代に知識偏重な時代があったのでしょうか。いつのことだか教えてほしいです。知識を大事にしていた時期があったとは思えないのですが。

現場もわかっていない?

さらに研究授業を指して、

担当教師が時間をかけて指導案を練り上げ、それを実践的に発表する「授業研究」も、明治時代以来続いている伝統的な研鑽スタイルです。授業後、参加者同士が意見を述べ合ったり、批評したりすることで、担当教師だけでなく、他の教師も刺激を受け、新たな知識や技能のヒントを得て、指導力の向上につなげることができるのです。(同書P156)

この「授業研究」と呼ばれているものが、どれだけ形骸化しているのかご存知ではないようです。研究会は、校長と教委の名誉のためにあると言っていい。形ばかりの指導案を、サービス残業で作り、教員どうしが「子どもたちの目がキラキラしている素敵な授業でしたね」と言い合う無意味な意見交換会となっているのです。こんなもののために、教師は子どもたちと接する時間を奪われています。

いちいちツッコミを入れればきりがありませんが、全体としての論点はぼやけていて、何が言いたいのかがよくわかりません。「日本の教育は世界から遅れている」「学校も大事だが家庭も大事だ」といった程度の話です。これだけ支離滅裂な本になってしまったのは、教育論は何を言ってもアリだからということと、氏の定見のなさが原因でしょう。それとも日頃からテレビで視聴者の耳に心地よいコメントを心掛けているとこういった文章になるのかもせん。ひとつひとつの論点は、「実際の教育現場がこうだったら批判のしがいがあるなあ」という筆致で描かれています。こういった著名人の妄言が教育改革の方向性を誤らせるのでしょう。日本は言論の自由があってほんとうによい社会だと思った今日この頃です。

中沢 良平(元小学校教諭)

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