私がテロ等準備罪という政府推奨の名称を使わないことにした理由

内閣の方ではテロ等準備罪という名称で共謀罪関連法案の議論を進めてもらいたいところだろうが、私は、今はテロ等準備罪と名称は使わないようにしている。

テロ等準備罪という名称を初めて聞いた時は、お、これは10年前に私が責任者として取りまとめた「テロ等謀議罪」と同じようなものか、と多少心が躍ったものだ。

しかし、その後の政府の説明を聞いて、政府の本心は基本的には11年前の通常国会に閣法として提出した政府案を殆どそのまま踏襲するものだ、ということが明らかになっていった。

「テロ等準備罪」の名称は、政府案がもっぱらテロ対策の一環として提案するものだという印象を国民に拡げるために編み出した特別の表現で、実際には「テロ等犯罪」に特化した特別の措置などは想定されていない。

対象犯罪を277とある程度限定し、かつ「共謀」という用語を「計画」と変更し、「実行準備行為を伴うテロリスト集団その他の組織的犯罪集団による重大犯罪遂行の計画」を処罰の対象とするなどして、如何にもかつての共謀罪法案とは構成要件を根本的に変えたかのように説明しようとしている。

しかし、テロ対策に関連する事項は一切なく、この法律が処罰及び取締りの対象としようとしているのはすべての組織的犯罪集団であって、テロリスト集団なる文言はあくまで国民に対する説明の便宜のために付加された文言でしかないことなどを考えれば、この法案の実質的内容はかつての「共謀罪」法案と基本的に同じだ、と言わざるを得ない。

新しい法案はいわば羊頭狗肉を売るようなものだぞ、ということが分かってきたから、騙されまいぞ、誤魔化されまいぞ、という自戒の念を籠めて、私は政府提案の新しい法案をあえて「共謀罪関連法案」と呼ぶことにしたのである。

そんな意地悪な、と思う人もいるだろうが、今の私は、自民党の党議拘束を受けるような立場にはなく、政府の説明を鵜呑みにしたり、他人の話を簡単に真に受けるようなこともしない。

いいことはいい、悪いことは悪い、おかしいことはおかしい、と言うことが今の私の役割だろうと思っているから、ちょっと変だよ、どこか間違っているよ、というくらいのことは遠慮なく言うことにしているだけである。

勿論、民進党や共産党の方々とは基本的立場を異にしているから、反対のための反対はするつもりはない。

国会で十分審議を尽くして、出来るだけ懸念事項が残らないようにして出来るだけいい法案を可決成立させてもらいたいものだと思っているから、多少の苦言を言っているだけである。

分かるかな。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。