ハフポスト×朝日のLadies be openイベント感想

2017年04月10日 06:00

朝日新聞系ウェブメディアのハフィントンポスト日本版(以下ハフポ)が、2月から「Ladies be open」というプロジェクトを始めたらしい。「女性の生理はとても大変。男性は、もっと理解と配慮が必要」という趣旨らしい。ハフポ編集部内でも、「26才の女性エディターが編集長に生理痛の辛さを訴える」「編集長の配慮で、彼女が生理痛で辛い時には、有給休暇・フレックス出退勤・在宅勤務(ただし音声は繋ぐ)・別室での勤務などを認める」という美しいストーリーが掲載された。

さらに、4月6日にはハフポ×朝日新聞メデイアラボ×某女性団体で、「もっと話そう女性のカラダ!仕事とカラダのいい関係」なるイベントを開催したらしく、ハフポ公式ツイッターによると「現代女性の生理の総回数は、50年前に比べて9倍」などとプレゼンされたそうだ。わざわざSNSで発信するあたり単なる誤字脱字ではなさそうだが、私にはとても信じられない数値である。その根拠を、ざっくり計算してみた。

A.現代女性の生理期間を12~50才の38年間と推定する。厚労省が発表した出生率(女性が一生に産む子供の平均数)の最新データは1.46(2015年)である。妊娠中~授乳中は生理が止まるので、1出産あたりの休止期間を2年間と推定する。現代女性の総生理回数=(38-1.46×2)×12=420.96と概算できる

B.50年前の1967年の出生率は2.23であり、初経年齢は13才頃と推測される。閉経に関しては「1964年の調査で平均47.9才」という報告があるので48才とした。50年前の総生理回数=(35-2.23×2)×12=366.48と概算でき、「約50年間で約15%の増加」なのである。

C.1920年までデータを遡ってみても、出生率は5.24である。「初経16才・閉経46才」と仮定して計算すると97年前の総生理回数=(30-5.24×2)×12=234.24と概算でき、「約100年間で1.8倍に増加」である。

ハフポ×朝日の主張する「50年間で9倍」には遠く及ばない

イベント登壇者は、「産婦人科医」「女性からだ会議の設立者」「女性をサポートする人材コンサルタント」に加えて「生理について猛勉強したハフポ編集長+エディター」というラインナップらしいが…こういう(自称)専門家が集まって話し合った末に、科学的にあり得ない数値が発信されてしまうことに、私は頭を抱えてしまう。Welq騒動でも言われたことだが、「間違った情報を流布されるぐらいなら、何もしない方がマシ」なのである。

かつての「従軍慰安婦報道」や、近年の「子宮頸がんワクチン副作用報道」のように、「セクシャルな問題で苦しむ若い女性」はセンセーショナルで世間の注目を集めやすい。今回のプロジェクトも「女性のカラダ」というタイトルなのに、話題は生理痛(10~30代が主)がほとんどで、不妊治療(30~40代)や更年期障害(50代)や性器脱(60代以降)などはスルーされている。また、26才エディターの生理痛手記は大々的に取り上げられているが、それに比べて54才の長野智子編集主幹の手記(生理痛だけでなく不妊治療についても記してある)は扱いが非常に軽い。「この会社の年配女性は元女子アナすら、こういう扱いになるのか」と、同じ50代女性として同情してしまう。

また、ウェブメディアという事業はリモートワークと相性がよい。アゴラの場合、レギュラーメンバーが出社を義務付けられているのは週一回である。私がアゴラ編集長と直接会うのは数ケ月に1度であり、普段の連絡はメール・SNS・Skypeなどである。報酬は原稿数やページビュー数に基づいて支払われ、結果さえ出せば仕事の場所や時間は拘束されないのでワークスタイルの自由度は非常に高い。現役政治家・育児中・闘病中のメンバーも参加可能であり、「編集長に生理痛の相談」やら「自宅での仕事ぶりをWebで遠隔管理」など、あり得ない話である。

ハフポがドヤ顔で報じた自社のリモートワークも、「朝日新聞系列会社」としては革新的なのかもしれないが、ウェブメディア業界関係者としては「はぁ?」という感想しか出ない。

とりあえず、一連のプロジェクト記事を読んで、私は「寄稿先がアゴラで良かった」と改めて実感したのだった。

写真はハフポ公式ツイッターより

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筒井 冨美
フリーランス麻酔科医、医学博士

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