特定商取引法49条を経済学的に考えると

2017年04月12日 06:00

写真ACより(編集部)

特定商取引法49条は、「継続してサービスを行う」事業では、利用者が「中途解約をすること」ができ「サービスを受けなかった分を精算の上返還」してもらえる旨規定したものです(規定そのものはぐちゃぐちゃしているので敢えて引用はしません)。

エステや塾、英会話などが「継続してサービスを行う」事業の典型例で、2007年に英会話学校のNOVAの返還金を巡って最高裁判決が出てきます。

NOVAは、大量の利用券を購入すると利用券の単価が安くなるシステムを採用していました。

単純化して説明すると(実際とは異なります)10回分を買うと3万円(一回あたり単価3,000円)、20回分を買うと5万円(一回あたり単価2,500円)、30回分を買うと6万円(一回あたり単価2,000円)というふうに、たくさん買えば買うほど単価を安くしていたのです。

30回分を6万円で買ったAさんが、15回分使ったところで解約して精算を求めました。したところ、1万7,500円しか返してもらえませんでした(しつこいようですが、事案は私が勝手に単純化しています)。

その理由としては、最初から15回分を購入していれば、最初の10回は3万円になり、次の5回分は1万2,500円(単価2,500円の5回分)になり、使った分は合計で4万2,500円になります。

受け取った6万円から4万2,500円を差し引いた1万7,500円を返金するということです。

Aさんとしては、「冗談じゃない。6万円支払って半分しか使っていないのだから3万円を返金しろ」と請求し、それが認められたのがこの判例です。

しかし、たくさん買えば単価を安くするという商売は他にもたくさんありますよね。

楽天などで食料品を買う時「3パック買うと1パックおまけ」「5パック買うと2パックおまけ」というのがたくさんあります。

私なんぞは、ついたくさん買ってしまいます(汗)

また、「スーツ2着目は1,000円」というのもあります。

1着目が1万円で2着目が1,000円で合計1万1,000円。最高裁の理屈は「1着返品したら5,500円返しなさい」というのと同じことになりませんか(返品が認められると仮定して)?

経済学的には、NOVAの言い分の方が正しいように感じるのではないでしょうか?

法律で「精算して返金しなければならない」と書かれているので、当初から15回しか通学する意思がなくとも30回分を6万円で買って3万円の返金を受ける受講生が続出すればNOVAの経営は成り立たなくなってしまいます。

経済学では、人間は合理的に判断し行動するという前提があるので、理論的にはNOVA側に圧倒的に分があります。

まとめ買いをしてくれれば単価を下げるというのは、どの商売でもやっていることですから。

なぜ最高裁が「3万円返せ」という判決を下したかというと(下級審も同じ判決です)、(表現は悪いですが)一般消費者は「お得だ」と言われれば飛びついてしまうアホだから(私のまとめ買いと同じです)、お上が守ってやる必要があるという理屈です。

確かに、商品が難解なものであったり(英会話学校やエステのように)試してみないとわからないものの場合は、購入者の退路をしっかり確保しておかないと悪徳業者が一般消費者を食い物にしてしまう怖れがあります。

しかし、ほとんどの継続的サービスでは「お試し」があるはずです(NOVAであったかどうかは知りません)。

「お試し受講」で納得して入会したところ、あまりにも水準が違っていた場合は民事上・刑事上の「詐欺」に該当するので特定商取引法の出番はありません。

私が思うに、「継続的サービス」の「まとめ買い」では、従業員に重いノルマがあって執拗に「まとめ買い」を顧客に勧めるケースがあることから、裁判所の判決はそれの自粛を求める意味があったのではないでしょうか?

繁華街での「客引き禁止」のようなものです。

ちなみに、「たくさんのエステ利用権があるけど、なかなか使い切れずに余っている」という女性の声を私は何度か耳にしたことがあります。

私が、「解約すれば返金してもらえますよ」とアドバイスすると「また使う時のためにとっておきます」とか「そのうち使い切ります」という人がほとんどでした(正式な法律相談ではなく雑談です)。

解約や返金を申し出るのが気恥ずかしいのと、口車に乗せられてたくさん買ってしまった自分の行為を正当化しているのでしょう(自分が口車に乗せられたとは認めたくないのが人間です)。

私も、まとめ買いをした食品は、いつも「美味しいなあ」「お得だったなあ」と自分に言い聞かせながら…食べ切っています(笑)

荘司 雅彦
2017-03-16

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年4月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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