東芝と東電の双子の危機で原発に黄信号

2017年04月14日 06:00

WHが建設中だったサウスカロライナ州のVCサマー原発(flickr/SCE&Gより引用:編集部)

原発存続論は現実に勝てるか

東芝という世界的な巨大企業が原発事業でつまづき、一瞬にして存亡の瀬戸際に追いつめられました。数年前に遡れば、これも日本で最大級の東電が原発事故を起こし、実質的な経営破たんに陥り、原発不信の暗雲を世界中に広げました。東芝危機と東電危機は連動しています。東芝の将来より、原発の将来をどう考えるが本当の問題ですね。

東芝は原子力事業から撤退、買収した米WH社は連邦破産法の適用申請です。世界の原発ビジネスを支えてきたのは、東芝ーWH、三菱重工ー仏アレバ、日立製作所ー米GEの3陣営ですから、その一角が消え去ります。東芝の経営危機は、世界の原発事業が先細りしかねない将来を暗示しています。85年以降、世界の原発は約400基で横ばいに転じたままです。

国内の報道に接していいますと、東芝が半導体メモリー部門をいくらで売却できるかとか、上場を維持できるかとか、銀行が救済融資に応じるかどうかなどに、関心が集まっています。そうしたことよりも原発のが将来どうなるか、どうするかが極めて重大な問題です。原発には世論の逆風が強く不人気なので、政府は深入りを避けているようです。

事故が起きると企業は破滅

東芝の損失は原発関連だけで7000億円です。まだまだ増えるでしょう。事故を起こした東電の処理費用は廃炉・賠償除染費用22兆円と、当初見込みの2倍に達する見込みです。事故が起きれば、どんな大企業であっても、破滅的な損害が発生します。安全性は軽視、人命を軽く考え、国土が広い中国はともかく、先進国では現実論として難しいビジネスとなりました。

日本では、新規稼働は09年が最後で、原子力産業は既存の原発の安全対策工事で食いつないでいます。新増設はもちろん、建て替えも困難で、運転延長の期限が切れたものから、次々に停止に追い込まれていきます。

原発を支える技術の衰退、技術者の減少、関連企業の脱落など、暗い見通しばかりです。温暖化ガス削減、石油・石炭・天然ガスなどの枯渇を考えると、現実論として、原発をなんとか維持していかないと、経済産業活動に影響がでるということは否定できません。その原発肯定論も、新たな技術開発、廃棄物の処理方法が生み出されていかない限り、説得力に欠けます。

将来への芽は残すという考え方

原発をめぐり、廃止論、存続論が対立し、交わることはありません。廃止すればするで、経済社会を維持するうえで、困難な問題がでてくる。存続させたらさせたで、巨大なリスクを抱え込む。数十年まえに、現在の社会の姿を見通せなかったように、数十年後に、技術的に新たな進展があるかもしれません。人類は今後、百年単位、千年単位で生き延びるのでしょう。将来につなげる芽を摘んでしまうべきでないとも、考えます。

福島原発で事故が起きたといといっても、原子炉そのもののメカニズムの失敗ではありません。堤防の高さを15m程度にしておけば、あるいは非常用発電機を建屋の屋上に設置していたら、事故を防げたかもしれませんね。チェルノブイリ、スリーマイル、福島を除けば、世界の他の地域では事故なく操業されています。

「原子炉そのものより、何らかの人為的なミスで起きた時の災害が怖い」という指摘も、そうなのでしょう。「原子炉を稼働させるより、事故が起きた時に対応できる技術があまりにも開発されていない。事故を防ぐ技術ばかりではく、事故後の対応技術が不十分」も、否定しようのない事実です。原発存続論はこれをどう乗り越えるかですね。

東芝、東電という双子の危機は、原発存続が企業経営として、困難さが増していることを示しています。特に日本ではそうです。原発に反対し、停止させなくても、現実論として徐々に原発は減り、依存度は結果として下がっていく。肯定派も否定派も、現実論に立脚して考えていく必要あると思います。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2017年4月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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