日本人はオーバーブッキングが大好き

2017年04月15日 06:00

写真ACより

米ユナイテッド航空が男性乗客を無理やり引きずりおろした事件は、CEOが謝罪する事態になり、世間はユナイテッド航空への非難の声一色である。

そんな中で池田信夫氏がアゴラに「オーバーブッキングは合理的である」という記事を投稿され、オーバーブッキングが合理的な経営であること、安全な運行のために乗務員が優先されることを冷静に解説されている。

私は事務機器メーカーで大阪勤務時代に、国内線(伊丹-羽田便)を何度も利用していたので、オーバーブッキングについて良く知っている。そこで、池田氏の記事に補足を述べさせていただきたい。

オーバーブッキングはみんなが幸せになる制度だ。日本の航空会社は、むしろもっとオーバーブッキングをアゲアゲで行こうぜ。

国内線でも常識なオーバーブッキング

池田氏が、TBSの安住紳一郎アナウンサーのオーバーブッキング体験談を紹介し、「日本の国内線でも、オーバーブッキングはあるようだ。「現金1万円」で乗客はOKらしい。日本はいい国だね。」とツイートされていた。

国内線で「現金1万円」でオーバーブッキングが簡単に成立することは、飛行機を頻繁に利用するビジネスマンには常識だ。

私は大阪勤務時代に、頻繁に東京・神奈川に飛行機で出張した。余談だが、伊丹空港には今もなお駐輪場があり、池田市・豊中市からは15分で行ける。始発(7:05~7:10)に搭乗するためでも、朝6時半に起床したら十分に間に合う。

問題は帰りである。伊丹空港は21時以降の離発着が禁止されているので、羽田の最終は19:30であった(最新の時刻表は19:20)。はっきり言って早い!

最終便に乗るためには、現地の仕事を17:30には終えなければならない。ちょっと会議が長引いたり、トラブル発生でアウトだ。これは、羽田-伊丹を利用している多くのビジネスマンが同じであろう。

そこで、帰りはビジネス切符で羽田の最終便をとりあえず予約しておく。そして、仕事が早く終われば早い便に変更し、長引けばキャンセルして新幹線で帰る。ちょうど最終便に乗ることができる確率は、2/3と言ったところか。

なので羽田-伊丹の最終便、特に金曜日は予約が殺到して満席であるが、直前まで予約のキャンセルが大量に発生する。そこで航空会社はできるだけ空席を無くすべく、多少のオーバーブッキングを行なっている。

これはJALANAも公表していることである。揃ってオーバーブッキングではなく、「フレックストラベラー制度」と名付けており、別便への変更に協力してくれたお客には協力金1万円 or 7500マイルを支払ってくれる。

今回、ユナイテッド航空のオーバーブッキングを批判している人は、名前こそ違えど日本でも常識な制度であることは知って欲しい。

オーバーブッキングにビジネスマンが殺到

そして、このオーバーブッキングであるが、ビジネスマンにとっては迷惑どころか大人気だ。

人気の国内線では予約のキャンセルが大量に発生するので、オーバーブッキングを行なっていても実際に座席不足になることは少ない。しかし、いざオーバーブッキングが発生し、別便への変更を求める館内放送が流れたら、我先にビジネスマンが殺到する。

私も一度だけオーバーブッキングに遭遇したが、油断していて間に合わなかった。見事オーバーブッキングをゲットし、1万円を貰った同僚はそのお金で高い寿司を食べたことを自慢していた。

なおオーバーブッキングが発生する確率は、国内線のデータは無いので経験則になるが、羽田-伊丹で1%弱というところか。私がこれまでフライトした82回でオーバーブッキングに遭遇したのが1回であり、同じように出張していた同僚の話も合わせて推定した。

とはいえ、ドル箱路線の羽田-伊丹は一日15往復している。他の路線も合わせれば、かなりの頻度でオーバーブッキングが発生しているだろう。

しかし、日本は良い国だ。

飛行機に乗れなくてもほとんどの場所には新幹線で行けるし、安くて清潔なビジネスホテルがたくさんある。飲み屋・ファミレス・カラオケ・漫画喫茶と、朝まで快適に過ごせる場所がたくさんある。予定していた飛行機に乗れない代わりに1万円を貰えるのならば、喜んで手を挙げる人々がたくさんいるのだ。

その理由は、少ないお小遣いの足しにするため、大義名分を貰って東京の夜を満喫するため、といったところだ。こうして多くのビジネスマンはオーバーブッキングに遭遇することを願っている。

なので、日本の航空会社は今回のオーバーブッキング批判に萎縮することなく、むしろもっとオーバーブッキングを増やしていくべきだ。

JALが一度は経営破綻したように、国土が狭い上、新幹線が発達した日本では航空会社の経営は厳しい。航空会社はもっとオーバーブッキングを活用して、航空運賃を下げ、乗客を増やすべきだ。そうなれば、航空会社も乗客もみんなハッピーになる。

またオーバーブッキングが増えれば、経済効果も期待できる。

オーバーブッキングに遭遇したビジネスマンは、「航空会社から1万円を貰った」とは(特に奥さんには)簡単に明かさない。なぜなら、正直に白状すればその分お小遣いが減るからだ。なので、「貰った1万円」はほとんど宵越しの銭として消費される。

オーバーブッキングが増えれば、空港周辺の経済は多少ながら活性化するだろう。

これからのオーバーブッキングを考えよう

しかし、オーバーブッキングが増えればそれを拒否する乗客とのトラブルが増えることも懸念される。ユナイテッド航空のように、対応が問題視されれば株価や経営にも影響する。

そこで、もっとスムーズにオーバーブッキングを解消するシステムを考えたい。

池田氏はオークションをして解決するのが合理的であるというVickeryの1972年の論文を紹介された。

オークションを行なって乗客に還元する金額を上げるのは一つの解決策であるが、私はオークションの人数を増やす方法を考えたい。私は航空会社が乗客全員とだけでなく、SNSを活用してもっと大勢の人々とオークションすることを提案したい。

今回のユナイテッド航空で問題になったように、乗客全員から降りて貰える人を募集したとしても目標の人数に満たない恐れがある。一つの便の乗客は300~400人が限界であり、増やせないからだ。これをもっと大勢の人を巻き込んでオークションできれば、取引が成立する可能性が高まる。

そのためにSNSを通じて、他の航空会社の乗客や、他の空港に向かう乗客、なんなら無関係の人を含めて、オーバーブッキングのオークションを行うのだ。

やり方はこうだ。オーバーブッキングが発生した航空会社は例えばtwitterに「JAL 羽田-伊丹 19:20便で5名のオーバーブッキング発生。助けて」とツイートする。

それを見て、ANAやスカイマークの伊丹行き最終便にまだ余裕があれば、「うちはOK」と返信する。そうすれば、関空行きや泊まりが嫌でも、他の航空会社に変えるだけならOKという乗客がいる可能性は高い。

さらに、ANAやスカイマークを合わせても満席であったとしても、ANAやスカイマークの乗客の中に「別便に変更しても良い」という人がいる可能性がある。航空会社を横断して別便に変更しても良い乗客を探すことで、航空会社と取引する乗客の数が倍増し、オークションが成立する可能性が高まるのだ!

また、逆に便に空きがある航空会社が「うちに代わってくれたら1万円」と募集を掛けても良いだろう。さらには、乗客が「乗れなかった。助けて」とツイートし、他の便の乗客とチケットを売買できるようにすれば、スムーズに座席の融通ができるだろう。

もちろん、実際にはtwitterではなく専用のSNSが良いだろうが。

これは、「お弁当を発注し過ぎた、助けて」「40人の団体客が無断キャンセルして料理が余った、助けて」というツイートで、お弁当や料理が無駄にならなかった例をヒントに考えたものだ。

オーバーブッキングはオークションで解決するべきというVickeryの意見は賛成だ。ただ、彼の時代にはインターネットは無かった。現代なら、SNSを活用してもっとみんながハッピーになれるオークションが実現できるだろう。

宮寺達也 パテントマスター/アゴラ出版道場一期生
プロフィール
2005年から2016年まで大手の事務機器メーカーに勤務。特許を得意とし、10年で100件超の特許を取得。
現在は、特許活動を通じて得た人脈と知識を駆使しつつ、フリーランスエンジニアとして活動中。
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宮寺 達也
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