成果につながらない仕事をしている人は仕事をしていない

仕事と成果の関係を明確にすることは、人事の永遠の課題である。かつては、仕事が成果につながるという常識的な発想が支配的であったと思われる。故に、仕事に値段をつける努力がなされたのである。

しかし、仕事と成果の関係が先に明確になっていない限り、仕事に値段をつけることはできない。そこで、仕事が成果につながるという考え方から、成果につながったものを仕事として特定していく方向への転換が生じるわけである。

それでも、多数の人材の多数の仕事が長短様々な時間軸の上で複雑な連鎖を経て成果につながるのだから、その連鎖を緻密に解析し、各仕事を定義し、その価格を算定することは、理論的には可能でも、明らかに実務的には不可能である。

不可能でもいい。分析の厳密性はどうでもよく、働く人の納得だけが問題だからである。要は、成果と仕事との関係に筋の通る説明ができるように仕事を定義し、それと成果との関係に一定の経験に裏打ちされた仮説を置き、その検証を続けていく、それしか人事にできることはない。

そうした検証は、成果につながらない仕事、それは定義により仕事ではないのだが、そうした仕事ではない仕事をあぶりだしてしまうであろう。革命的発見である。懸命に必死に仕事をしても残念ながら成果につながらない人などというものは、定義により、あり得なくなるのだ。それは、端的に仕事をしていないということなのだ。

しかしながら、そうした人は、どう考えても、何かを懸命に必死にやっているはずだ。では、何をやっているのか。何をやっているかわからないので、それを一般的に行動と呼ぶ。そうすると、成果につながる行動が仕事で、成果につながらない行動は何でもないということになる。

こうして、報酬については、成果につながる仕事に対する報酬へと展開し、そして更に、成果につながる行動への報酬へと進んでいくわけである。登用については、成果につながる行動へ着目し、そのような行動をとる人材を登用する方向になったのである。

では、成果につながらない行動様式の人材をどうするのか。おそらくは、自律的にも他律的にも、行動様式改革には限界がある。自然に淘汰されていくとして、その間、それに対する報酬は不可避の費用とみなすほかあるまい。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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