「がんばり迷子」にならないためにどうするのか問題

常見 陽平

4月23日(日)の深夜1時より、TBSラジオ「文化系トークラジオLife」に出演する。「春の「がんばり迷子」相談室」 というテーマだ。うむ、実に秀逸なテーマ設定である。

2017年4月23日part0(予告編)「春の「がんばり迷子」相談室」 

出演前に、私の問題意識のようなものを、番組の予習をかねて書いておくことにしよう。

春、というか新しい期が始まると、思わず意識が高くなってしまう。大学の教員をやっているが、なんせこの春も新入生が入ってきたわけで。新歓シーズンの真っ只中だ。サークルの勧誘なども盛んに行われている。もともとの在校生もそれぞれ進級しており。サークルでも幹部になっていたりする。

そういえば、NHKの英会話テキストが最も売れるのは春だという話を聞いたことがある。他にも書店にはこの春、何かを始めたい人のための本が並んでいる。

しかし、この何かを始めたい衝動とか、その誘惑というのは魔物で。いつの間にかいっぱいいっぱいになってしまう。楽しく始めたこともいつの間にか楽しくなくなってしまう。人間関係も面倒くさくなってしまう。さて、どうしよう、という。

ここ数年、実際、この時期に本学の学生に限らず「やりたいことが多すぎる」という相談をよく受けるし。あと、実際、様々なことをやってしまって就活の時になって「あれもこれもやってきたのだが、何をアピールするべきか」なんて言い出す学生だっている。こういう学生は実際、それぞれ上手く両立し、成果を出していたりもする。

自分自身の「がんばり迷子」体験を少し話すと・・・。

・大学2年生の時に、自分を変えたくなり、ゼミ(任意)を2つ履修、第三外国語履修、さらに単位取得が難しそうな科目(一橋大学用語でいう”シビア”な講義)を履修。いっぱいいっぱいになる。

・大学3年生の時に、プロレス研究会の会長をしつつ、学内でも屈指の厳しい(というか、やることが多い)ゼミに所属し、毎日、ぐったり。

・38歳の時に、社会人院生になるが、非常勤講師の講義8コマ、連載月20本、講演週2本、出版年7冊と両立し、パンク。

なんてことがあったな。もっとも、この時の経験は貴重で。忙しさにあまり動じなくなったかな。また、自分が何に向いていて、何に向いていないのかがよくわかったような。

今の私は「もっと頑張った方がいいんじゃないの?」というくらいに働いていないのだけど。いまは、出産の準備というか、妊婦の妻を支えることが最優先だからね。とはいえ、この春、新しいことは始めていて。「参加者はリタイアしたおっさん中心のセミナー」に通うようにしたこと、筋トレを極めるために、契約ジムを1つ増やしたこと、かな。そして、「始める」ことだけでなく「始まる」こともあるわけで。おかげ様で、官庁・自治体から有識者として呼ばれることが増えたかな。

思うに、今どきの「がんばり迷子」に関しては、何かを始めることが以前より簡単になっているし、選択肢が増えていることも一つの原因なのではないかと思っている。要するに何かを始めるための初期投資が明らかに下がっているし、情報もネットで手に入るし。さらには、中古流通が発達しているので、何かを始めたときに撤退するのも簡単になっていると。参入と撤退のハードルが下がっているのではないか、と。

「がんばり迷子」で、苦しんでいるなら、やめる勇気が必要で。ただ、自分からは切り出しにくいので、他の人からのきつい助言が必要かな。「もうそれ以上、やめろ」「何かに集中しようよ」的な。

あと、何かをやめることというのも実は、後ろ向きなことではなく、頑張っていることだと思う。パワーを何かに集中させるわけだから、ね。

というわけで、話が拡散したが、明日は頑張りますかね。聴いてね!

 

新作よろしくね!


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年4月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。