米国の都市、ヘルスケアや教育で活況を取り戻す

2017年04月24日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは投信情報会社モーニングスターの次期最高経営責任者(CEO)のクナル・カプール氏を取り上げる。クナル・カプール氏は41歳で1997年にアナリストとして入社してから頭角を現し、特にモーニングスター・インベストメント・サービシズの立ち上げに尽力した。金融アドバイザーはポートフォリオ・マネジメント・ビジネスを同サービスへアウトソースするようになり、モーニングスターでのポートフォリオ管理部門の口座は2,000億ドル、手数料収入は総収入7億9,900万ドルの17%に及ぶ。カプール新CEOが導くモーニングスターの詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム”アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート”、今週は米国内の都市経済に注目する。抄訳は、以下の通り。

トップ・エコノミスト、米国内の小都市の繁栄に注目=Top Economist Finds Small U.S. Cities Thriving.

「百聞は一見にしかず」——過去41年間で36回にわたりトップ・エコノミストに輝いた、投資会社エバーコアISIのエド・ハイマン氏は、こう語る。同社が40以上に及ぶ調査を経て、米国の都市しかも海岸沿いのメガロポリスではなく小都市が「活況を遂げている」といい、それはウォールストリートよりメインストリートにとって利点が大きい。各地を訪れるハイマン氏はイリノイ州シカゴ、ミネソタ州ミネアポリス、カンザス州カンザスシティといった都市だけでなく、アイオワ州デモインズ、サウスダコタ州スーフォールズ、オハイオ州コロンバス、インディアナ州フォート・ウェインなどが活況だという。

何が経済を押し上げているのか。ハイマン氏いわくヘルスケア、高等教育、それらに関わるスポーツ関連が支えになっている。例えばやや誇張の感は否めない者の、クリーブランド・クリニックと地元NBAチームであるクリーブランド・キャバリアーズのレブロン・ジェームス選手がオハイオシティの消費を刺激してきた。カリフォルニア州ロサンゼルスで映画産業が盛んだがジョージア州アトランタでも同様で、カントリーのメッカであるテネシー州ナッシュビルは音楽が有名だ。つまり、米国を再び偉大にしている産業は製造業ではない。

ミレニアル層(一般的に1980〜1999年生まれ、18歳から37歳を指す)にも、変化が現れ始めた。ハイマン氏いわくa3%に及び、全体の1%を上回るペースだと説明する。

ミレニアル層を含む年齢での労働指標、回復途上も金融危機前の水準に届かず。

labor-indicators
(作成:My Big Apple NY)

ただし、全ての都市というわけでもない。フロリダ州タンパやカリフォルニア州パームビーチは好況だが、メキシコ湾岸や大西洋州は上昇気流に乗っていない富裕層は経済にネガティブな見解を抱き、ハイマン氏にしてみれば混乱材料である。

世界の中央銀行が流動性を与えている点は、見逃せない。イングランド銀行と欧州中央銀行は過去3年以内に合計で2.14億ドル相当の債券を取得した。日銀と米連邦準備制度理事会(FRB)、ECBは13兆ドルに及ぶ資産を有し、世界全体の金利を抑制した。FF金利が0.8%であるところ、アマゾンの受注動向が上向き続けるのに理由はいらないだろう。

ただし、ハイマン氏は米株と米債市場には比較的控え目だ。S&P500は21日終値の2,349から2017年末に5%上昇の2,450、米10年債利回りは同2.24%から2.75%を予想する。実体経済をめぐっては、「トランプ米大統領を嫌悪しようが彼はポジティブであり、ビジネス推進派でアニマル・スピリットを呼び起こした」と評価した上で、財政刺激や規制緩和により支えられると見込む。

医療保険制度改革(オバマケア)撤廃と代替案移行、並びに税制改革が議題として戻ってきた。オバマケア撤廃・代替案移行の見通しは疑問の余地を残すものの、ムニューシン米財務長官は年内実施の可能性に言及、トランプ米大統領が語った「水曜日(26日)」辺りでの税制改革案提示と符号する。しかし地政学的リスクが台頭し、暫定予算の期限が切れる28日に政府機関の閉鎖が見込まれるため、ホライゾン・インベストメントのグレッグ・バリエール氏は議会が政府機関閉鎖の回避を優先すると想定する。議会は税制改革に対し強く支持するが、オバマケア撤廃と代替案移行はいくら共和党が上下院で多数派を握っていたとしても引き続き厄介なお荷物となるだろう。

5月3日に予定する四半期定例入札で、米財務省が50年債あるいは100年債など超長期債の発行を決断するか注目だ。JPモルガンは仮に50年債が発行されれば、30年債利回りを20bp上回ると予想する。21日終値での30年債利回りは、2.89%だ。ノムラ・インターナショナルは50年債の発行を見込み、30年債利回りを20〜25bp上回る水準を想定。ゴールドマン・サックス(GS)は、むしろ超長期債の発行に懐疑的だ。既にディーラーは需要に懐疑的であり、また50年債や10年債の発行は日和見的で、定例入札の慣行に沿わない。そもそも超長期債はインフラ投資への財源として発行される見通しで足元で何も決まっていない以上、発行する理由づけがないとGSは判断する。

金融市場は21日、第1回目の仏大統領選挙を控えて下落して取引を終えた。BREXITやトランプ米大統領の誕生もあり、何が起こるか分からない。

——50年債や100年債の発行は、以前から何度か取り上げられてきました。トランプ政権の中核メンバーを4人も輩出したGSのほか、ソシエテ・ジェネラルも否定的。ムニューチン米財務長官も2016年11月2017年2月に超長期債の発行に前向きな発言を展開していたものの、足元は言及していません。発行を決断する時期は5月ではなく、税制改革やインフラ投資をめぐる議論が高まってからでも遅くはないでしょう。

(カバー写真:Jason Mrachina/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年4月23日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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