【映画評】無限の住人

2017年04月30日 06:00
無限の住人 不死身の用心棒編 (講談社プラチナコミックス)

100人斬りの異名を持つ伝説の侍・万次は、罠にかけられて目の前で最愛の妹を殺される。自身も瀕死の重傷を負うが、謎の老婆によって永遠の命を与えられてしまう。死ぬことができず、無限の身体となった万次は、生きる意味を見失い、孤独で退屈な日々を送っていた。そんなある時、剣客集団・逸刀流の首領である天津影久に両親を殺された少女・凜から、仇討ちを遂げるため用心棒を依頼される。どこか妹に面影が似た凜を見て、彼女を守ろうと決心する万次。だが、万次と凛の前に、逸刀流の最強の暗殺者たちと、同じく天津を狙っていた幕府軍が、天津もろとも襲い掛かり、想像を絶する死闘が繰り広げられる…。

不死身の剣士・万次の壮絶な闘いを描くアクション時代劇「無限の住人」。原作は、沙村広明の同名人気コミックだ。万次は望んでもいないのに不死身となるが、不老不死で無為の時を過ごしたため剣術の腕は衰え気味。傷は再生するが、斬られれば痛みを感じ、血も流れる。体内の魔虫による治癒力を弱められれば、最強ではいられない。事実、万次は、何度も腕を切り落とされたり、ザックリと斬られたりと、不死身とはいえ、強いんだか弱いんだか微妙なキャラクターなのだ。心の奥底にある優しさゆえに、不死を終わらせることさえできない万次は、切ない男なのである。1対1の戦いでは刺客の個性が際立ち、敵側の中には心が通じあうものもいれば、同じ運命を共有する刺客もいる。

だがクライマックスの300人を相手にする壮絶なバトルになると、もはや敵味方や善悪を超越した死闘となっていく。このカオスの趣や、宿場の密室的空間での活劇は同じ三池崇史監督の「十三人の刺客」を思い起こさせるものだ。ほぼ全編、殺陣が続くが、バラエティに富んだ武器や、キャラ毎のイメージカラーなどで映像的にもメリハリがあって飽きさせない。顔に傷を持ち片目だけの眼力で熱演する木村拓哉、可憐な杉咲花、初の悪役ながらどこかさわやかな福士蒼汰と、俳優たちは皆好演だ。とりわけ、少林寺拳法の心得があり、身体の柔軟性から美しくキレがあるアクションをみせる戸田恵梨香が素晴らしい。映画の中の不死身の戦士といえば、ハリウッドではその強さが全面に出る。一方、本作の主人公は、人を殺し続ける呪われた運命と愛するものを失う哀しみを知る心優しき刺客だ。生きるのにうんざりしていた万次が、誰かを守るという目的を持ったことで輝きだす。俳優・木村拓哉の本気が伝わるアクション活劇となった。
【70点】
(原題「無限の住人」)
(日本/三池崇史監督/木村拓哉、杉咲花、福士蒼汰、他)
(流血度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年4月29日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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