【映画評】フリー・ファイヤー

2017年05月02日 06:00
Free Fire

1978年のボストン。銃密売取引のため、場末の倉庫に2組のギャングがやってくる。簡単な取引かと思われたが、チンピラ同士のいざこざから交渉がこじれ、口論の末、壮絶な銃撃戦が始まってしまう。クセ者ばかりの悪党たちは、全員が瀕死の傷を負い、罵声とうめき声が飛び交う発狂状態の中、銃を撃ちまくる。双方の思惑、仲間割れ、謎のスナイパーの出現…。最後まで生き残るのは一体誰なのか?!

武器取引の交渉が決裂し壮絶な銃撃戦となるバイオレンス映画「フリー・ファイヤー」。上映時間はわずか90分だが、映画の8割は銃撃戦という異色作だ。倉庫という密室空間の中で、2組のギャングが全員参加で延々と撃ちまくる。だが、雨あられの発砲で傷だらけになるのに、登場人物たちはなかなか死なないのだ。射撃の腕が悪いのか、はたまた銃の精度が低いのか、さっぱり致命傷を与えられない。足や肩、脇腹や太腿のようなハンパな部位に当たっては、痛みでうめきながら身体ごとズルズルとひきずって物陰に隠れるというトホホな状況なのだ。考えてみれば、西部劇の凄腕ガンマンや、訓練を積んだスナイパーじゃあるまいし、フツーのギャングたちが撃っても、こめかみや心臓に簡単に当たるはずがない。いつまでも生きているため会話も弾み(?)、そこには思わぬ本音や腹の探り合いがあって、次第にそれぞれの欲望が露わになる。

死ねない、殺せないで、物語はウダウダしたカオス状態が続き、スピード感には欠けるのだが、その分、奇妙な緊張感があって先読みできない面白さも。70年代への偏愛、激しい暴力描写、クセモノ揃いのキャラ、とぼけたユーモアや無為な会話と、これはもう完全に初期のタランティーノ作品と同じテイストだ。俳優たちは皆好演だが、とりわけ、紅一点の女ギャングを演じるオスカー女優のブリー・ラーソンがいい。銃撃戦の激しさと、車の中から流れるジョン・デンバーのさわやかすぎるメロディーの対比には唸った。冒頭にベン・ウィートリー監督の注釈ともいえる字幕が入る。「CIAの資料を山ほど呼んだが、人は銃で撃たれても、かなりの時間、生きている」。人間はそう簡単には死なないのだ。ウン、これがこの怪作のテーマに違いない。
【70点】
(原題「FREE FIRE」)
(英・仏/ベン・ウィートリー監督/ブリー・ラーソン、アーミー・ハマー、キリアン・マーフィ、他)
(カオス度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年5月2日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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