キャリアと子育て100%の満足は不可能だ

何度産休したらクビに出来るの?

上記のはてな匿名ダイアリーで「4度目の産休を取る人」についてグチをこぼしています。おそらく産休だけではなく、育休も取得しているかと思いますが、そうだとするとだいたい3年くらい連続で休んでいる可能性があります。

私もあるところから、看護師で1年~3年ほど産休・育休を採る人が何人かいて頭が痛いという話を聞いたことがあります。なので数年産休・育休を取得するという事例は少ないながらも存在しているのでしょう。

育休をフルに利用しないドイツ・フランス

海外ではどのくらい育休を取得するのでしょうか、ドイツの例がありましたので見てみましょう(参照)。

ドイツでは2007年に7%だった男性の育児休暇が2013年には27%と大幅にアップしています。女性は95%が育休を取得しており、日本よりも産休・育休が社会に浸透しているのは確実です。

しかし実際にどのくらいの期間育児休暇を取得しているかと言えば、女性は9割以上が10~12ヶ月、男性は1~2ヶ月が8割弱となっています。

次にフランスでは2006年に出生率が2.0を超えて、先進国の中でも少子化対策がしっかりしているイメージがあります。ですが育休を取得している女性は2分の1~3分の1で(参照:pdf)、男性にいたっても2%しか取得していないとされています(参照)。女性に関しては日本の方が利用率が高いくらいです。

フランスもドイツも育休をフルに取得する人は非常に少ないのです。

育休=女性をベビーシッターとして利用?

フランス・ドイツ共に最大で3年の育児休暇を取得できるにも関わらず、フルに取得しない理由の一つが保育所・ベビーシッターの問題があります。フランスもドイツも、待機児童問題は日本と同じように存在し、ベビーシッターですらも待ちが発生しているのが現状のようです(参照:サイト1サイト2)。

保育所が使えない、ベビーシッターも使えないとなると、あとは自分で子育てをするしかありません。幸い、ドイツ・フランスには手厚い育休制度があるので、3年ほどは収入などもある程度確保出来ます。が、下記のように長い育休制度を批判する声もあるようです。

サルコジ大統領は、フランスの手厚い育児休業制度を「女性にとっても、家庭にとっても、社会にとっても、無駄」という表現をし、改革に乗り出そうとしている。「無駄」というのは、労働意欲があるのに休職を強いられている女性たちの現状を指している。(参照:フランスの育休制度

2013年に安倍首相が3年抱っこし放題という政策を掲げたときには、多くの批判が出ました。3年抱っこし放題と言っても、結局フランス・ドイツなどの事例を見ればわかるように、3年抱っこし続ける事はできないのです。

キャリアと子育ては両立しないという現実

育休を語る上で欠かせないのがキャリアの問題です。アメリカでは育休制度自体がなく、産休後もすぐに働く理由は失業することへの恐怖だそうです(参照)。アメリカは産休・育休の制度が遅れていると言われており、自身の仕事やキャリアの事を考えて、女性であっても積極的に取ろうとしません。

一方のフランス・ドイツでは産休も育休も有給で取得することが出来ます。取得することは出来ますが、だからといってフルに取得する人はほとんどいません。法的に育休後の職場復帰で不利益になるようにしてはいけない、決まっていますから職場には戻れます。戻れますが、仕事はやはり遅れてしまいます。

ドイツの男性が1~2ヶ月で職場復帰するのも、まさに自身のキャリアを考えてのことでしょう。それ以上休むことで出世や昇給の道がなくなってしまう、と考えてのことだと思います。女性もそれは同じで1年を超えて休むと、キャリアに遅れが生じてしまうと考えるのでしょう。

日本の育休議論で欠けていることが多いのはまさにこのキャリア形成の議論ではないかと思います。女性が産休や育休を取得して、さらに出世も狙うならどの程度まで休めるのでしょうか?男性の場合はどの程度まではキャリアにキズがつかないのでしょうか?こういった疑問に答えてくれる人、資料は今のところ存在しないのではないでしょうか。

キャリア形成と育休のバランスを考えるという点が、教育の分野でも労働の分野でも欠けていると感じます。最初に紹介したはてな匿名ダイアリーでも、キャリア形成と育休のバランスに関しての教育がなされていれば、産休・育休で休む人にイライラすることもなかったでしょう。

フランスでも子どもを預けられずやむを得ず育休を取って、キャリアを中断する人がいるくらいです。日本もおそらく待機児童解消までは数十年かかるでしょうから、子育てとキャリア、両方100点満点の人生を歩むことは不可能でしょうであれば、我々が考えるべきは個々人の最適なキャリア形成と子育て・家庭のバランスではないでしょうか