「都民ファースト」って都民の味方なの?

2017年05月16日 06:00

正月に築地市場を視察した小池都知事(都庁サイトより:編集部)

前回のエントリー「小池さん、20億円の豪華クルーザーはレガシーなの?」に、いくつかご意見をいただいたので、この場を借りて補足しておきたい。まず、小池都知事は就任当初から「東京都の闇を正したい」と訴えてきた。こうした訴えに共感し、超党派を含めた高い支持を獲得するに至った。

また、当初から徹底した情報公開の必要性を訴えていた。行政の硬直化を防ぐにはあらゆる情報の公開が有効であるとしていた。情報公開は、「都民ファースト」の行政を確立するための手段としていたため、お聞きしたものである。

「身を切った」知事に都民は熱狂する

実際に、都の政策立案~決定に至る過程及び理由については充分な情報が公開されているとはいえなかった。開示請求をしても、海苔弁当のような黒塗りの非公開文章が出てくる。その刷新の一つがオリンピックーパラリンピックだったと記憶している。これによって、予算、準備体制、工程表、妥当性が検証されることになった。

小池知事は身を切る姿勢を示すために、公約に掲げた知事報酬の削減について、ボーナスなどを含めた知事給与を半減するための条例案を提出し成立する。都知事の場合、給料は月額145万円になる。これに地位手当てを加算し賞与2回分の手当てを加えると、想定年収は2896万円になる。これを半減させたのだから、かなり強い姿勢を見せたことになる。

ちなみに、年収約1450万円は都道府県知事としては全国最低になる。対して都議の報酬は年約1700万円。また、議会公務のために登庁すれば特別区・島嶼部の議員は1日1万円、三多摩地区は1日1万2000円の費用弁償が支給される。これにより、都知事と都議の報酬が逆転することになる。自らが率先して身を切ることはなかなかできることではない。

だからこそ、当初の公約どおりに、五輪費用分担問題、豊洲移転問題については情報を公開することが望ましいのではないかと思う。しかし、小池都知事は五輪費用分担問題については政局になることを懸念されているのかも知れない。

小池都知事『政局化』にイライラ、五輪費用分担問題」(日刊スポーツ)。

豊洲も政局ではないの?

都知事就任から約9ヵ月。専門家が安全と指摘する豊洲問題もいっこうに解決の見通しがたたない。小池都知事が「豊洲問題は選挙の争点になりえる」と述べていることについて、下村都連会長は「選挙の争点にしてはならない」と批判している。

都が大家の立場なら業者は入居者。気の毒なのは物件が決まらない真面目な業者だろう(一部に保証金目当ての業者も存在するという話もあるが)。仮に豊洲に移転して現状並みに経営を軌道に乗せるには数年はかかるに違いない。それを選挙対策のために延期しているという話であれば落ち着いてはいられない。

特に最近の風評は一線を超しているようにも思える。豊洲の水産物、青果物にはベンゼンやシアン化合物、砒素、水銀までが混合しているかのような物言いだ。このような猛毒が含まれているなら誰も食べたいとは思わないだろう。マイナスの風評被害の影響の極みだ。

さらにダメージを受けているのが豊洲など湾岸地区のマンションである。既に地価の下落が起きているという。現実的には、この地域の物件が相場以上に高騰していたため、適正価格に落ち着いたと評価する人もいるが、いずれにしても豊洲ブランドは失われつつある。

豊洲に移転しようが築地に留まろうが、食に対する大きな不信が残ってしまった。東京都からはすでに補填などにより多額のお金が蒸発している。決まるのが遅ければ、ドンドンお金は無くなっていく。一方、豊洲移転反対者は、「築地のブランドを斥けることは許されない」と声を高々にする。しかし、築地の再整備が現実的とも思えない。

「マイナスの価値をもつ負のブランド」を払拭することは簡単ではないだろう。そのため、「豊洲」が衰退の道をたどる可能性は極めて高い。それならば、価値の高い「築地ブランド」(名称)を存続させればよいのではないか。

築地ブランドを消してしまえば、ブランドの再生は極めて困難になる。そのためにも築地ブランドを何らかの形で残すための施策が必要になると思われる。

政局を正しく読む

豊洲移転問題が、今後どのように収束するかはわからないが、メディアから発信される情報は適切に読み解く必要性がある。特に、日本人はメディアの発信した報道を「信用できるもの」として受け止める傾向が強いので注意が必要だ。

昨年以降のネットメディアの潮流は著しい。都知事選、参議院選、その後は蓮舫氏の二重国籍疑惑を追及したことでその注目が集まった。いま、話題の書籍がある。アゴラ編集長の新田哲史氏が上梓した『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? 』である。

政治のノンフィクションだが決して難しい本ではない。本書を読めばメディアの特性や、発信する意図を踏まえたうえで取捨選択することの必要性が理解できるはずだ。メディアに関心をもつ多くの人に参考にしてもらいたい。

尾藤克之
コラムニスト

<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―

第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
次回の出版道場に、1年前にトランプ勝利を予言した、渡瀬裕哉氏が登壇」。

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