住宅手当あれこれ

2017年05月23日 11:20

官舎というものがあった。今もあるが、公務員住宅といっているはずである。官舎は、結構立派で、何よりも、いい立地にあるにもかかわらず、家賃は破格に安いから、これは、大変に有利な現物給付であったわけである。

背景には、全国どこへでも転勤し、しかも転勤の頻度が高いという官僚の勤務形態の特殊性があっただろうし、往時の住宅事情もあったであろうが、それよりも、官僚の特権的地位を象徴するものという側面のほうが強かったのではないのか。

企業の社宅というのも、官舎と同様な背景を有していたと思われるし、自社員を特別なものとして処遇する側面も共有していたと思われる。ただし、官舎とは異なって、供給面で、社宅に入居できる人の数は限られるので、その不公平を調整するために、住宅手当が必要になったのであろうし、借り上げ社宅のような制度も必要になってきたのである。

また、住宅のような現物給付に税制面での利益があることは見逃せない。住宅手当は課税所得だが、社宅の低廉家賃と実勢家賃の差額は課税所得ではないからである。

さらには、転勤等で生じる不公平を是正しようとする意図もあったわけだろう。そこには、企業の公正処遇についての思想の表明があったのかもしれない。

例えば、北海道勤務には、寒冷地手当が出ていたはずである。昔は、暖房用に薪を焚いていたのだが、そのうち石炭になったので、石炭手当などといっていたものである。石炭代は、寒冷地勤務にともなって生じた余計な出費だから、それを補償するのは、当時としては、筋が通る考え方だったのである。

当時は、冷房はなかったから、寒冷地の暖房費だけが余計な出費として目立ったのだが、今はそうではない。寒冷地には、逆に、冷房代が少なくてすむという利益がある。また、何より、田舎の生活費は安い。官庁のように東京に本部のある全国組織の場合、報酬水準は東京基準なので、地方勤務者の場合、生計費格差によって、大きな利益を得る。それが公平か不公平か、そのような答えのない問題について、いちいち斟酌してはいられない。故に、諸手当廃止になったのである。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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