抗がん剤治験方法の大変換;臓器別から遺伝子タイプ別へ

2017年05月25日 11:30

時代は変わった。それを実証する薬剤承認が、FDAから昨日公表された。成人・小児に関わらず、標準治療法で効果がなかった(なくなった)進行固形がんに対して、免疫チェックポイント抗体の利用が承認されたのだ。

治療が適用となるがんに対するバイオマーカーとして、マイクロサテライト不安定性が高いもの(microsatellite instability-high (MSI-H))とDNAミスマッチ修復遺伝子欠損(mismatch repair deficient (dMMR))があげられている。

「マイクロサテライト」とはゲノム中に存在するCACACACA・・・・のように単純な配列が繰り返す配列を指す。DNA修復遺伝子異常があると、下記の図にあるように、DNAの複製時にエラーが起きるため、CACA・・・・・などの繰り返しの長さが変化し、正常(N)とがん(T)での長さが異なる(黒いバンドの位置が違ってくる)ことが多い。これは、このCACACA・・・・・と繰り返している回数が、正常とがんで異なっているためで、遺伝暗号が変化しやすくなっている(変異を起こしやすい)ことを意味する。

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一般的にDNA修復遺伝子異常のある場合には、がん細胞での遺伝子異常数が多くなる。アミノ酸に変化を起こすと、それを含むペプチドが、がん特異的な抗原を生み出すので、マイクロサテライト不安定性の高いがんやDNA修復遺伝子異常のあるがん(DNAシークエンスでわかる)は、がん細胞特異的な抗原が多い。したがって、がん組織における、これらのがん特異的抗原(ネオアンチゲン)を目標とした、がんを攻撃する免疫活動が高くなっている。そして、少数例ではあるが、これらのがんでは免疫チェックポイント抗体が効きやすい可能性が示されていたのである。

このようなエビデンスをもとに、大腸がん、子宮体がんなど15種類の異なるタイプのがん患者149名を対象として治験が実施され、39.6%の患者でがんの縮小、あるいは、消失が認められたのだ。治療法のない患者さんに対して、この頻度は文句なしに高い。効果があった患者さんの78%が6ヶ月以上の効果が持続したと報告されていた。

もはや、時代は大きく変わりつつあり、臓器に拘らず、科学的エビデンスに沿って、抗がん剤開発が進むことを実感しなければならない。小児がん、稀少がんなどと区別している時代ではないのだ。がん患者団体はこのような流れを受け止めて、一致団結して新しい流れを模索して欲しい。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年5月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
シカゴ大学医学部 内科教授、外科教授

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