弁護士が解説!「パチンコはぼくの人生そのもの」という人の案件

2017年05月31日 06:00
無題

写真は荘司弁護士(ブログより)

先日、ある自治体が、パチンコを理由に生活保護受給者への給付を停止した措置について、県から「不適切」と指摘され方針撤回をしたニュースが話題になった。パチンコには、数%程度の確率で勝つかも知れないというギャンブルへの高揚感がある。しかしその軍資金は血税から成り立っている。「権利」と「恩恵」の問題は難しい。

アゴラにも記事を投稿いただき、各種行政委員会委員等も歴任している、荘司雅彦氏(以下、荘司弁護士)の近著『本当にあったトンデモ法律トラブル』(幻冬舎新書)には、今日にでも降りかかるかも知れないトラブルの事例が分かりやすく紹介されている。

パチンコが原因の借金は免責されない

――「パチンコはぼくの人生そのものです。金輪際、パチンコを止めるつもりはありません」「それを裁判官の前でも言うつもりですか?」「はい。ぼくは絶対に嘘はつけませんから」。これは、ある自己破産申立の依頼者と荘司弁護士との会話である。

「ある日、50代後半とおぼしき女性が、私の事務所を訪れました。聞くところによると、一人息子がパチンコにのめりこんで、複数のサラ金等から借金をし、膨れ上がった借金を返済できなくなった。そして、たくさんの会社から督促の電話が一日中鳴り止まずにかかってくるようになったとのこと。」(荘司弁護士)

「息子は、とりあえず働いてはいるものの、収入が少ない上、相当額をパチンコで使ってしまうため、家計に入れてくれるお金は少なく、自分がパートに出て、病気の母を合わせて3人の生活をやりくりしている。」(同)

――借金返済の督促の電話が毎日何度もかかってくるので「病気の母も自分も一種のノイローゼになっている」とのことだったようだ。

「『任意整理』などの債務整理はできない状態でしたので、本人が納得したら、自己破産の申立を行うということにしました。本人が納得したため、自己破産の申立書を作成するために、いろいろ事情を聞いていたときの会話の一部が、冒頭のものです。個人の自己破産については、最終的に免責が認められるかどうかが問題となります。」(荘司弁護士)

「裁判所の免責決定が下りると、それまでの負債は法的には免除されますが、免責には『不許可事由』というものがあり、賭け事のために借金をしたような場合には、裁判所は免責を不許可とすることがあります。」(同)

――つまり、今回のようなケースでは免責不許可となる可能性が高かったのである。

「破産手続が無事に終わっても、パチンコは絶対に止めないと本人が言い張る以上、パチンコが原因で返済不可能な借金を重ね、自己破産の申立に至ったと申立書に記載して裁判所に提出しました。」(荘司弁護士)

最終的にどうなったのか?

――賭博が刑法で禁じられている、この国で破産審尋(裁判官が申立人の口から破産申立に至った経緯等を聞く手続)の当日、裁判官は申立書に目を通し、次ぎのように聞いた。

「『あなたが本人ですよね。申立書記載のとおりパチンコで借金を作ってしまったのですか?これから、パチンコを止めるつもりはありますか?」と、やや困惑顔で尋ねました。『パチンコで借金を重ねたのは事実です。これからもパチンコを止めるつもりはありません!』。本人のあまりにもキッパリとした口調に、裁判官は少し驚いた顔をしました。」(荘司弁護士)

「そして、『代理人。免責不許可となる可能性が高いですが、それはご承知ですね』と、私に話を振ってきました。本人のためというより、本人の家族のために本件申立をいたしました。破産決定さえいただければ、督促の電話はなくなるでしょう。免責の申立(当時は別途必要でした)は、行わないつもりです。」(同)

――相談に来た母親と祖母は、督促の電話の嵐から逃れることができ、事実上の成果は十分得ることができたとのことだ。荘司弁護士は、「賭博が刑法で禁止されているわが国で、きらびやかなネオンに包まれたパチンコ屋を見るたびに、この国の不思議な矛盾を感じさせられます」としめくくった。

世の中の弁護士にも色々なタイプの人がいる。いざという時に慌てないためにも、信頼できる弁護士とのコネクションを構築しておきたいものである。

参考書籍
本当にあったトンデモ法律トラブル』(幻冬舎新書)

尾藤克之
コラムニスト

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第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
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