プロに頼まなくても、「売れるコピー」は自分で書ける

尾藤 克之

写真は、さわらぎ/寛子氏。

キャッチコピーの重要性はビジネスをしている人であれば、誰もが理解をしている。しかし奥が深く難しい。「カッコいいキャッチコピーをつけたのに売れない」「エッジを立てたら、うさん臭さが残って逆効果になってしまった」など、失敗事例も枚挙にいとまがない。

コピーライターとして活動する、さわらぎ/寛子(以下、さわらぎ氏)の近著『キャッチコピーの教科書』(すばる舎)には、キャッチコピーのヒントが、つまびらかに紹介されている。主な実績としては、近畿日本鉄道の「舞台は、伊勢志摩」キャンペーンなど、大手企業の広告制作が多い。今回は、キャッチコピー作成のヒントについて聞いた。なお、2問ほど例題を用意したので一緒にお考えいただきたい。

お客様の「気になる!」を引き出す

――プロの世界では言葉を「極端」にすることがある。「極端」にすることで、お客様が無視できなくなる効果が秘められている。

「同じ内容のことでも、『気になる言い方』に変えることがあります。同じことを言っているのに、多くの人が気になってしまう表現があると思います。言葉に引っ掛かりがあるというか、スルーできずに思わず読んでしまうような言葉です。」(さわらぎ氏)

「たとえば、少し前に流行った『~すぎる』という言い方。『美人すぎる議員』『神すぎる対応』など、思わず、『どういうこと?』と気になりますよね。」(同)

――「~すぎる」は、言い方の変換であろう。キャッチコピーを考える際には、対象物の見方を変えることで印象が大きく変わることがある。さわらぎ氏によれば、見方を変えることで可能性や期待感が高まることがあるという。

「たとえば、『ロケットも、文房具から生まれた』(トンボ鉛筆)、『四十才は二度目のハタチ』(伊勢丹)などが当てはまると思います。文房具の価値が上がったり、40歳になるのが楽しみになったりしませんか。」(さわらぎ氏)

「今までとはちょっと違う視点で商品やサービスを見てみると、思いもよらなかった、大きな可能性を感じられるコピーが生まれるかもしれません。ただしウソや大げさすぎる表現はNGです。そう言われればそうだなという納得感が大切です。」(同)

――以前、某呉服屋から採用業務を受託したことがある。きものを販売する仕事がメインだが、「きもの販売」の魅力が伝わらない。そこで「きもの販売」という表現を使わないことにした。「日本文化を育む~」「日本の伝統を守る~」というキャッチコピーにかえた。結果は上々で、この呉服屋は以降、このキャッチコピーを使用している。

<例題1>
いま、女子に大人気のメロンパンのキャッチコピーを考えていただきたい。例文の「人気の」(3文字)を7文字に置き換えることで、魅力的なコピーが完成する。この7文字はいかに。ヒントは「こよなく愛する気持ち」が伝わること。記事最下部に回答記載。

例文:「女性に人気の冷やしメロンパン」
正解:「女子が○○○○○○○冷やしメロンパン」

「自分にできそう」と思ってもらう

――商品を買うとき、お客様は「その商品を使えばどのように変わるか」に関心がある。しかし魅力的な商品でも難しい文言ではなかなか響かない。

「たとえば、肌が美しくなるという美白美容液があったとします。肌をキレイにするためには、美容液を使う以外にも何か努力が必要なのではと思われるかもしれません。ですが、『1日1回、夜に2週間続けただけで79%が効果を実感』という文言を追加するとどうでしよう。『これなら自分にもできそう』と思ってもらえるでしょう。」(さわらぎ氏)

「簡便性を伝えるには、『誰でも』『簡単』『すぐに』というフレーズが便利です。しかし、それだけを付け加えても、グッとくるコピーにはなりません。」(同)

――安易に言葉を並べるだけでは決定要因にはならないということだろう。それではどのようにすべきなのだろうか。

「人は『自分だけ』『今だけ』に弱い性質があります。簡便性ともう1つスパイスになるのが『限定』です。『東海地方限定』『ここでしか買えない限定商品』など、『今買わなきゃ』と思わせるコピーのスパイスになります。」(さわらぎ氏)

――たしかに、地方に出張に行くと地域限定商品を銘打った「ボールペン」「キーホルダー」「お菓子類」「日本酒、ビールなどの酒類」が販売されている。

<例題2>
「スッキリ収納インテリアの法則」というキャッチコピーがある。このコピーでも悪くはないが、頭に7文字を加えるとさらに魅力的なコピーが完成する。この7文字を考えていただきたい。ヒントは「数字」がはいること。記事最下部に回答記載。

例文:「スッキリ収納インテリアの法則」
正解:「○○○○○○○スッキリ収納インテリアの法則」

「売れる」キャッチコピーがわかる一冊

――「この商品を買ってもらいたい」「チラシやPOP、カタログで良い文言を書きたい」「ブログやメルマガでPV数を増やしたい」「企画書やプレゼン、会議で目を引いて提案を通したい」。キャッチコピーが上達すれば、様々なメリットに転用することが可能だ。

本書は「キャッチコピーの技術」に関心のある人には最適ではないかと思う。また、例文は難しいかも知れないがキャッチコピーを考えるうえでのヒントになれば幸いである(本書の一部を引用し筆者がアレンジを加えている)。

参考書籍
キャッチコピーの教科書』(すばる舎)

※以下、例題の回答。

<例題1>
例文:「女性に人気の冷やしメロンパン」
正解:「女子が愛してやまない冷やしメロンパン」

<例題2>
例文:「スッキリ収納インテリアの法則」
正解:「1日5分で片づくスッキリ収納インテリアの法則」

尾藤克之
コラムニスト

<アゴラ研究所からお知らせ>
―2017年5月6日に開講しました―

第2回アゴラ出版道場は、5月6日(土)に開講しました(隔週土曜、全4回講義)。
講義の様子「アゴラ出版道場第3回目のご報告