「正社員、正家族」から「共社員、共家族」の時代へ --- 伊藤 将人

2017年06月09日 06:00

現在、働き方改革などの議論が進んでいる。そもそも現在スタンダードとなっている正社員とはどのような存在なのか。また正社員を支える家族についても含めて考えてみたい。

自営業からサラリーマンへ

日本において、1960年頃までは農業を中心とする自営業が就業者の50%を占めていた。その後急速にサラリーマン化が進み、現在の自営業を営んでいる人は10%まで程度である。

自営業からサラリーマンへの変化は、仕事と家族との関係でいうと「仕事の家族からの分離」である。自営業において仕事と家族は不可分のもので、家族は仕事の労働力でもあったわけだが、サラリーマンでは仕事と家族は個々に存在する。その為、子供を多産するインセンティブは相対的に低くなったといえる。しかし、経済が発展途上で保険や年金などのインフラが十分に整備されていない社会では「生活する為に」家族は不可欠なものであった。例えば、夫婦で生活することは(共働きが前提)1人で生活するよりも効率的だし、高齢になることを考えて子供を作ることも必要なことだろう。ある一定の時期まで家族は生活する為に必要不可欠なものであったわけである。

正社員と正家族

正社員とはどのような存在であるかというと「なんの仕事でもやる人(できる人)」である。典型的な正社員とはオフィスワーカー(ホワイトカラー)を指す。製造業の工場などの仕事(ブルーカラー)は職務定義が比較的明確にできる仕事である。例えば「何時間で何を何個製造するか」「何日までのどの段階まで仕事を進めるか」など個々の仕事を定義することができ、求められる能力も比較的分かり易い。そこで働く社員は「この仕事をやる人(できる人)」のことである。

一方、オフィスワークは明確に職務定義することは難しく、色々な職務を時機に応じてこなすことが求められる。このようなオフィスワーカーは職務の幅が大きいがゆえに様々な経験を積むことが求められ、ゼネラリストである必要がある。このことは使用者側に転勤や職務変更の大きな裁量が与えられる働き方であるといえるだろう。そして、使用者と労働者はこのような使用者側の大きな裁量を認めるバーターとして、長期的な雇用と生涯賃金の保障を約束した。このような前提で働く社員が正社員という存在であると考えている。

そして、この正社員を支える存在として「正」家族(標準世帯)という家族形態がスタンダードとされるようになる。正家族とは転勤や職務変更などストレスの多い正社員を「専業主婦」が支える家族形態である。正社員、正家族を補強するものとして、企業手当や厚生年金などが整備された。

現在、今後の変化

では現在、どのような変化が起きているのかというと、正社員と正家族の限界が露呈してきていると考えている。正社員は「なんの仕事でもやる人(できる人)」であった訳だが、各職務が複雑化したことなどにより、「なにもできない人」に成り下がるケースが散見されるようになってきた。また女性の就業の促進や社会保険の充実、老人ホームの整備などにより、結婚をしないという選択肢や共働き世帯が増加するなど専業主婦を前提とする正家族は減少している。

現在企業は「この仕事のエキスパートで、さらにあの仕事もできる」というような社員を求めているように思う。転職など外部労働市場も活用し「エキスパートでありながら、その他の分野にも知見がある」社員を獲得、育成しようとしている。彼らは、共通の目的の為にある一定期間一緒に歩むエキスパートであり、いうならば、「共」社員(共にいる社員)である。実質的に有期的な働き方や職務限定的な働き方も多く、長期雇用を前提とした正社員とは異なる存在といえるだろう。

今後の家族像はどうなるだろうか。1990年代以前と比べると、結婚率は低下し、離婚率は上昇し、また再婚率も上昇している。仕事において見られたように、家族形態も徐々に変化していくのかもしれない。一部で契約的な結婚など結婚の新しい試みが図られているが、この流れは進み、生涯をともにするということが前提の正家族からある共通の目的により、有期的に共にいる家族「共」家族に変化していくのかもしれない。

最後にエクスキューズさせていただくと、今後も正社員、正家族のような形態は続くだろうし、有益なことも多いと考えるが、それ以外の形態も増えるかもしれないというのが本稿の趣旨である。また本稿は私の希望を表明したものではないし、エビデンスや会社の業務に基づくものではない。ごく個人的な予想をコラムとして表明したものにすぎないということもつて加えたい。

伊藤将人 人材系シンクタンク勤務
大手新聞社入社後、人材系シンクタンクに転職。また、フリーライターとして各種執筆活動に従事。

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