獣医師の新たな需要は確認できず:石破4条件は満たさず

2017年06月09日 06:00

加計学園問題、行政はゆがめられたのか?

安倍総理の「腹心の友」が経営する加計学園に、52年ぶりの獣医学部新設が認められた件について、行政の公平性・公正性がゆがめられたのかどうかが問われている。

この問題のポイントは、以前のブログでも書いたように、石破茂前大臣の時代、安倍内閣が自ら2015年6月30日の閣議決定で決めた、いわゆる「石破4条件」をクリアして新設が認められたのかどうかだ。

この「石破4条件」が客観的に満たされていれば、加計学園の理事長が総理の「腹心の友」であるかどうかは関係ないし、逆に、満たされていないのであれば、総理の友人であろうがなかろうが問題である。 

改めて「石破4条件」とは何か。

  1. 現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し、
  2. ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、
  3. 既存の大学・学部では対応困難な場合には、
  4. 近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

(「『日本再興戦略』改訂2015」p.121より) 

この閣議決定の意味するところは明確だ。

政府の公式見解では、獣医師の数は、地域的、分野別の「偏在」はあるものの、日本全体でみたときに総数としては足りているとされている。

よって、新たに獣医学部を新設する場合には、従来型の獣医師の活動分野とは異なる、創薬やライフサイエンスなどの「新たに対応すべき具体的需要」が確認されるなら認めるという内容である。

疑惑解明の最短ルートは「情報公開」

そこで、政府が、創薬やライフサイエンス等における獣医師の「新たに対応すべき具体的需要」をどのように確認し、昨年11月9日の国家戦略特区諮問会議で事実上加計学園のみに獣医学部新設を認める決定に至ったのか、を検証することが重要になる。

この決定に至る行政内部の意思決定については、当然、関係する「行政文書」が残っているはずだ。

それを開示し、判断の根拠になった「新たに対応すべき具体的需要」に関する明確な数字、バックデータを示してもらえれば、今言われているような疑惑はすぐに晴れる。 

しかし、政府に求めても「文書は確認できない」「出所不明なものは調べない」と言うばかりで何も出てこない。国会で質問しても、安倍総理も関係閣僚もまともに答えようとしない。

そんな中で、前川喜平・前文部科学事務次官から「行政がゆがめられた」といった証言が飛び出したり、文科省内部から提供されたと思われる文書やメール、そして現役官僚の証言が次々と出てきている。

安倍総理が疑惑を晴らすためには、「石破4条件」を満たしていることを、誰が、いかなるデータや資料に基づいて判断したのかを明らかにすればいいだけだ。

その説明がないので、「総理のご意向」や「官邸の最高レベルが言っている」ことで決まったのではないかと疑われているのである。

「新たに対応すべき具体的需要」の根拠

そこで、昨日(6月7日)の国会で、改めて創薬やライフサイエンスなどの「新たに対応すべき具体的需要」について質問した。

さる6月1日の国会審議で、山本担当大臣は

需要を定量的に把握することは困難でありますが、製薬会社等の会社に勤務する獣医師の数や会社に就職する新卒者の数が、この10年間で約5~6割増加していることは、新たな需要が具体的に発生していることをうかがわせる

と答弁している。

そもそも、新設を認めた担当大臣が、閣議決定で決めた条件である「新たに対応すべき具体的需要」を定量的に把握できないと開き直っていることに驚いた。

あわせて、判断根拠の数字らしきものを答弁しているので、では、「新たな需要」に関係すると思われる製薬会社で働く獣医師数は具体的に何人増えたのかと聞いた。 

すると、内閣府の藤原審議官は、平成16年(2004年)から平成26年(2014年)の間に、製薬会社等の「会社」に勤務する獣医師は、1436名から2174名に増えたと答弁。

これだけ聞くと、一瞬、製薬会社で働く獣医師数は増えていて、創薬などの「新たに対応すべき具体的需要」があるのかと思ってしまう。 

しかし、この答弁には、数字のごまかしがある。

まず、平成16年~平成26年の間に、「会社(診療を除く)」に勤務する獣医師の数は、確かに1436人から2174人へと、738人、約51%増えているが、同じ時期に、犬や猫などのペットの獣医師(小動物診療)も、10122人から15345人に5223人に52%増えている。

そもそも、この10年間で、獣医師の数自体が、31333人から39098人に約7765人増えており、この増加数のうち、「会社(診療を除く)」の増加分が占める割合は、9%に過ぎず、小動物診療の増加分が67%を占める。

また、ペットの獣医師は20年間一貫して増えているのに対して、「会社」で勤務する獣医師の数は、平成4年(1992年)には2347人と平成26年と同水準に達しており、「会社」の数の増減は、「新たな需要」というより、景気変動の影響を大きく受けると考えられる。

さらに、この「会社」のカテゴリーの中には様々な業態の民間会社(例えば飼料会社等)が含まれるので、「会社」のうち「製薬会社」に勤務する獣医師はどれだけ増えたのかと聞いところ、なんと、平成26年の数字はあるが、平成16年の製薬会社の統計はないので、分からないとの答弁。

これには驚いた。

製薬会社“等”で働く獣医師の数が10年で5割~6割増えたと大臣が国会で答弁し、いかにも、創薬などの「新たに対応すべき具体的需要」があるかのような印象を与えておきながら、実際には、製薬会社で働く獣医師数がいくら増加したかは分からない…

今や政府は、こんな数字のごまかしまでするのか。

これこそ、安倍総理が多用する「印象操作」ではないか。 

ただ、こうした説明も、問題発覚後、「4条件」との整合性を問われて、適当な数字を探してきて作られたものだろう。役人の皆さんも、無理やりやらされているのかもしれない。私が指摘をしている間、バックシートに座っていた文科省の局長が何度もうなずいていた姿が印象に残っている。 

こうした答弁からも、「4条件」を無視し、「加計学園ありき」で獣医学部新設が認められた疑惑が深まったと言える。 

私も、岩盤規制に穴をあけていくことには賛成だ。しかし、それはあくまで国会や政府が決めたルールにしたがって行われなければならない。ましてや、自らが決めた閣議決定さえ無視して決めたとしたら、それは「行政をゆがめた」と批判されても仕方がない。内閣法6条違反にもあたる。

この強引な意思決定が、誰によって、どのように行われたのか?

真実を明らかにするためにも、与党の皆さんには、前川前次官の参考人招致の実現を是非お願いしたい。行政の公平性や公正性がゆがめられたのか、真相を明らかにする必要がある。

これは、与野党を超えた立法府の責任のはずだ。


編集部より:この記事は、衆議院議員・玉木雄一郎氏の公式ブログ 2017年6月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。

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