コミーVSトランプ 二つの事実+評価が二転三転の免疫療法

2017年06月10日 23:00

コミー前FBI長官の証言を伝える民主党上院公式Facebook(編集部)

コミー元FBI長官の議会での証言とトランプ大統領の発言が完全に対立している。コミー氏は「食事は大統領から誘われた」「忠誠を求められた」「フリンの捜査をやめるように言われた」と言い、大統領は「コミー氏が求めてきた」「忠誠など求めたことがない」「捜査の中止など求めていない」と発言した。コミー氏は「トランプ大統領を信用できないので、詳細なメモを残していた」と証言し、トランプ氏は、公務員の守秘義務違反の可能性を示唆したし、以前には、食事中の会話の録音テープが存在することを匂わせていた。テープを明らかにすれば、白黒がスッキリするはずだ。しかし、かつて、ニクソン大統領は、残されていたテープで辞任に追い込まれた。どちらかが嘘をついていることは確実だが、米国ではAlternative Factという二つの相対立する事実が並立する不思議な事象がまかり通っている。

日本でも、メモが残っているのかどうか、メディアが騒いでいるが、意向を忖度するメモがなぜ重要なのか、よくわからない。獣医学部を設置する必要性の是非が最も大切だと思うのだが、なぜか、肝心の論点から逸れたままだ。本当に必要な状況なら、利権を排除しようとした真っ当な政策であり、それをトップダウンで進めることのどこに非があるというのか?官邸サイドから圧力があっても、褒められても、批難されることはないはずだ。メモの存在の有無などどうでもいいことではないのか?安倍政権の足を引っ張りたいメディアに振り回されることなく、正論で議論して欲しいものだ。対ロシアという国益の根幹にかかわる米国の問題に比して、どうも問題が矮小化され、不思議の国のアリスのようだ。 

免疫療法の分野でも、腫瘍浸潤リンパ球(Tumor Infiltrating LymphocyteTIL)を利用した治療法に対する反応は複雑だ。その評価が、シーソーのようにギッコンバッタンとしている。一時はもてはやされたものの、その後に評価が下がった。私も懐疑的であったが、考え直す必要があるかもしれない(詳細は別の機会に)。免疫チェックポイント抗体が有効な患者さんのがん組織には、がん細胞の特異的抗原を認識し、がん細胞を殺すリンパ球が存在しているのは確実だ。それらを体外に取り出して、増やし、患者さんに戻せば、抗腫瘍効果が期待されてもおかしくない。 

ASCOの会議中に面談した研究者は、がん組織のリンパ球には、善玉と悪玉がいると確信していた。善玉は、がんと闘っているリンパ球で、悪玉はがん細胞を守り、場合によっては増殖を手助けしているようだ。この善玉リンパ球と悪玉リンパ球を見極めるアプローチの一つとして、われわれのT細胞受容体解析に興味があるとのことだった。どうも、TIL療法で臨床効果が認められる患者さんでは、増やして体内に注入したリンパ球が長期間存在し(正確には、がん細胞と戦うために、増殖し続けているのだと思う)、効果がない患者さんに注入したリンパ球はすぐに消えていくようだ。 

多発転移のある患者さんで、がんの原発部位を切除すると、転移部位が急速に増悪すると聞かされたことがある。おそらく、この原発部位では、がんは少しずつ大きくなっていても、そこでがん細胞と闘っているリンパ球が存在していて、全身に善玉リンパ球が供給されていたのかもしれない。原発巣を切除することで、善玉リンパ球が消滅し、一気に悪化したのかもしれない。と、どうでもいいことが頭に浮かぶ。免疫系は複雑だ。しかし、がんの治療の進歩には欠かせない分野となってきた。TIL療法を提供している医師・研究者と是非、一緒に研究したいものだ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年6月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

タグ:
アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
中村 祐輔
シカゴ大学医学部 内科教授、外科教授

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑