強姦罪における「承諾」の有無について

2017年06月12日 06:00

昨今、強姦罪(準強姦罪)の成否が世間を騒がせています。実のところ、法律実務では強姦罪の成否は極めて認定が厄介な問題です。

最大の問題は、「(被害者)の承諾の有無」によって強姦罪の成否か別れるところにあります。
「承諾の有無」は極めて主観的なものであり、当事者にしかわかりませんし、場合によっては当事者であってもはっきり認識できないケースもあります(飲酒等により記憶が曖昧であるような場合)。
過去の裁判例では、概ね次のような点に着目して強姦罪の成否を決めています。

第一に、被告人から被害者に対してどのような暴行・脅迫がなされていたかが問題となります。薬やアルコールで意識不明にさせて姦淫する準強姦罪の場合は”暴行・脅迫”は関係ありませんが、通常の強姦罪が成立するためには何らなの”暴行・脅迫”が要件となります。

意識がはっきりしている状態で、全く脅迫すらされずに性交渉を持てば強姦とは認定できませんから。
この点については、「脅されてラブホテルに連れ込まれた」という被告人の供述に対し、「通常のカップルと変わりがなかった」というホテル従業員の供述やその他の状況証拠を採用して強姦罪の成立を否定した判例があります。ナイフでも突きつけられて連れ込まれたのならともかく、普通にラブホテルに入っておいて強姦と認定するのは極めて困難です。

第二に、犯行後の被害者の言動、特に被害申告の有無・程度が問題となります。たとえば、被害者が、被害直後に警察等に駆け込んで被害申告をしたような場合等は強姦罪の成立を強く推測させる事実となります。
逆に、犯行後も被害者が被告人と連絡を取り合っていたケースや、犯行後1ヶ月以上経過し自己の妊娠に気づき、当時の交際相手から問い詰められた結果被害申告に至ったようなケースでは強姦罪の成立を否定しています。

第三に、被告人と被害者の人的関係が問題となります。従来から恋人同士と周囲から見られていたような関係であれば強姦罪成立が否定される方向に傾きます。

逆に初対面の場合は強姦罪の成立が認められやすいかと言えば、決してそうではありません。出会い系サイトやナンパで知り合った場合、相手に好感を抱けば、その延長として性交渉を容認する意思がある場合もあるので、知り合った経緯等を慎重に吟味しなければなりません。

従来の刑事法学の世界では、「被害者側の過失」という概念がありました。犯罪危険性の高い場所に深夜一人でフラフラと入り込むように、犯罪被害における被害者側の不注意や落ち度を指します。仮に強姦罪の成立が認められたとしても、男性と二人でラブホテルに入るのは落ち度が甚大と言わざるを得ません。

強姦事件と認定される事件には、「もう少し被害者が慎重であってくれたら」と考えさせられる事件があります。

被害者が、以前からの面識があった同年代の男性に誘われて、親の目を盗んで深夜のドライブの最中に犯行が行われた強姦事件の弁護をしたことがあります。海沿いに駐めた車の中で被告人がにわかに性的欲望を抱いた案件で、事実認定は争いようがありませんでした(接見の際に本人にあれこれ問い詰めても、頭をかいて「魔が差したんです」と苦笑いするばかりでした)。

強姦等の性犯罪は被害者に甚大なダメージを及ぼし、その後の人生を変えてしまう恐れすらある許しがたい犯罪です。

私が司法修習生として検察庁に配属されたていた時、強姦罪や強制わいせつ事件などを検察官たちが「イロモノ」と呼んでいたのに驚愕しました。甚大な被害案件をピンク映画のように表現する検察官たちの見識を疑いました。

とはいえ、被害者側に落ち度があるケースは本当に多々あります。普段からわが身を守る最低限の配慮だけは忘れないようにしましょう。(「承諾の有無」に関わらず男性が処罰される)18歳未満の子供じゃないのですから。

説得の戦略 交渉心理学入門 (ディスカヴァー携書)
荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年6月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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