英国総選挙はコービン労働党党首の勝利ではない

八幡 和郎

英労働党党首・コービン氏(Facebookより:編集部)

イギリスの総選挙で予想よりも労働党が健闘したことから急進左派のコービン党首の勝利とみる向きがある。

しかし、私はおかしいと思う。むしろコービンのような極端な左派でなければ労働党政権になっていたはずだ。

前回の総選挙で大接戦の予想にもかかわらず、惨敗した労働党では、予備選で戦闘的な労組の支持を集めたコービンが大多数の議員の反対にもかかわらず代表になった。

そのコービンがEU離脱反対に熱心に動かなかったのもブレクジットが国民投票で勝ってしまった原因だ。

今回の総選挙での保守党の後退(政権維持したのだから敗北ではない)で、責任を取り、辞任した最側近のティモシー、ヒル両補佐官が辞任したが、メイ首相が夫を含むこれら側近だけと相談して政治を進める姿勢が後退の原因と言われる。

とくに、お年寄りが亡くなると持ち家を処分し、未払いだった介護費用の支払いに充てる新しい制度をマニフェスト(政権公約)に掲げるも「認知症税」という批判され、撤回に追い込まれた。この公約の採用に関わったのが彼らだ。

コービンがこうした公約をポピュリスト的に攻撃して成功したのは事実だが、最後の段階で急激な追い込みが止まって逆転できなかったのは、やはりコービンが左過ぎて政権を託すのは躊躇せざるを得なかったからだと思う。

このイギリスの選挙を見て民進党が左派的になれば善戦できるなどと思わないことを願う。一方、コービンの健闘の理由として、知的で清潔なイメージがあった。これは、民進党党首にかけらもない美点だ。