テロ等準備罪と呼び習わす“欺瞞”克服に、何を為すべきか

2017年06月12日 06:00

TBSの取材に、国会審議への苦言を呈す早川氏(編集部)

四角い頭を丸くする、などという宣伝を最近は目にすることがなくなったが、地下鉄で受験塾のこの宣伝と設問を見掛けた時は、一生懸命頭を捻ったものである。

設問に真正面から取り組もうとすると、大体は答えが出せなくて降参、ということになるのだが、頭を柔らかくして切り口を変えると案外なところで答が見つかることがある。

テロ等準備罪という呼称が大変な効用を発揮して、相当多くの国民の方々がテロ等準備罪なら結構じゃないか、となっておられるようである。

しかし、私は、今の国会の審議程度で、今国会に提出された「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」(政府与党や読売、産経がテロ準備罪と呼び、民進党、共産党、日弁連、朝日、毎日、東京などが共謀罪と呼ぶ罪を創設する法案。私の言う、いわゆる共謀罪関連法案)を成立させることにはどうしても賛成することが出来ない。

テロ等準備罪という一つの新たな罪が創設されるわけではないんですよ、と言ったくらいでは、なかなか理解していただけないようだ。277という新たな計画・準備罪が出来るんですよ、などと言っても、まだ、皆さんピンと来ないようだ。

まあ、自分たちには関係ないことだ、と一旦思ってしまうと、そこで大体の人が思考停止になってしまうのは仕方がないのだが、自分には関係がないことだと信じ込んでいる人たちに、いや、ひょっとしたらあなたやあなたの家族、あなたの知人や友人に関係があるかも知れませんよ、と言っても、先入見がある人にはなかなか通じない。

騒げば騒ぐほどオオカミ少年のような扱いを受けてしまうから、困ったものである。

計画準備罪、というのが良くないのかも知れない。

罪に問われる可能性があるのは計画段階に加わったすべての人で、準備行為はあくまで計画段階に加わったすべての人を処罰するための要件でしかなく、処罰されるのは計画そのものですよ。
計画と言えば如何にも大それたもののように思われるかも知れませんが、別に計画書などが作成されなくても、捜査当局の認定次第では当事者の間で計画が成立したと見做される場合があり得るんですよ、とでも言えば、少しは関心を持ってもらえるかも知れない。

いや、それはあくまで組織犯罪集団としての実態があり、関係者の間で役割分担が明確に決められている場合に限定されるはずだから、一般の私たちにはやっぱり関係ないことでしょう?などと仰る方もおられるが、組織犯罪集団かどうかの認定は捜査当局の判断次第だから、ある程度の団体性があり、その団体で277の罪のいずれかに該当しそうな行為の実行を話し合っただけで、如何にも277の罪の計画罪を犯してしまったように見做される可能性がある。

テロリズム集団が如何にも行いそうな典型犯罪なら計画段階で処罰の対象にして、未然に被害の発生を防止する必要があることは間違いない。

しかし、政府原案で対象犯罪とされている277の罪の中には、一般の企業や団体、個人が犯しかねない経済犯罪、いわゆる資金源犯罪等が含まれており、捜査当局の認定次第で一般の企業や団体、個人にまで捜査の網が被せられることにもなりかねない。

277の罪の実行行為に一切関与せず、未遂にも準備にも該当しないのに、計画に加わったのではないか、という嫌疑が掛けられただけで、捜査の対象となり、逮捕、勾留されても文句が言えなくなるのだから、計画段階で処罰の対象としなければならないほどの重大な被害を及ぼす危険性がどれほどあるのか、ということは、相当厳密に審査される必要があるのだが、今の段階ではまだそこまでの審議は尽くされていない。

捜査当局は、組織犯罪集団を一網打尽にすることを狙うのが習性だから、対象犯罪が広ければ広いだけ、捜査の対象が広くなるのは自然の流れである。

さすがに、居酒屋で話し合っただけで罪になる、というのは大袈裟だなあ、と思わないでもないが、捜査当局から一旦目を付けられたら大変なことになりそうだなあ、と警戒しておいた方がいいことは間違いない。

タックスヘイブンなどを利用しての合法的な節税策を考えたことがある企業の経営者は、少なからずいるはずである。

あれは、各国の税制の法の網を掻い潜る、違法な国際的組織的な税金逃れだ、などと税務当局や捜査当局から認定されたら、日本の著名企業や有名人なども捜査の対象となることを免れなくなる。

私は大丈夫、などと軽信しないことである。

あなたは大丈夫でも、あなたの家族やあなたの親しい友人に嫌疑が掛かってくる可能性は皆無ではない。

何しろ、どこまでが合法で、どこから違法になるのか境界が不分明なことが世間には五万とあり、法的にグレイなところで様々な経済行為が行われている、という実情があるのだから。

まあ、それでも、それは杞憂です、心配することは何もありません、と断言される方がおられるのだろうが・・・。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年6月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。

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