週刊ポストの小池新党「女性候補者」報道に見る “蓮舫化”

2017年06月13日 06:00

各政党の関係者から“週刊ポスト砲”の感想について相次いで尋ねられたのだが、今週号では『「小池新党」候補者たちの〝自分ファースト〟なウラ履歴書』という記事で、都民ファーストの会の立候補予定の女性たちのネガティブ情報が特集されている。私の地元、港区の書店では、立候補予定者のフジテレビ社員、入江のぶこ女史のことが特に槍玉に挙げられたせいか、週刊現代より売れ行きがいいようだ。

週刊誌は記者クラブメディアと違って、選挙中でも公平性など意に介さないから、告示前のこの時期はなおさら容赦ない。入江氏に関しては、ここまで夫を事故で亡くし、シングルマザーで苦労して子どもを育て上げてきた“ストーリー”を前面に立ててきたが、週刊ポストは、フジテレビ関係者への取材をもとに“実は”シングルマザーだった期間がそう長くなく、夫の元上司と再婚し、セレブ生活を送っていたとして追及している。

詳しい内容は同誌に譲り、その内容の是非は本稿では問わないが、今回、私が着目したのは、この報道に至るまでのネット世論の動向だ。

政界やメディア関係者にはおなじみだが、大手週刊誌は発売前日にはゲラが永田町界隈で出回る。ただ、今回が少々異様だったのは、週刊ポスト編集部には遺憾なことだろうが、当該記事のゲラが発売前日からネット上ですでに流れており、アンチ小池のネット民の間ですでに拡散されてしまっていた。

発売前に拡散されていた週刊ポストの記事(※ツイッターより:一部加工してます)

GWにはあった危機の芽。蓮舫氏の二重国籍問題を彷彿

発売前のゲラがネット上に出回るというのは、いかにも永田町・霞が関界隈で脈々と続いてきた昭和期の慣習に思え、インターネット時代の感覚からすれば、大々的に流出した案件がこれまで少なかったのがむしろ奇跡的だが、永田町・霞が関のインナーサークルの住人の間では、ある種の「マナー」「常識」としてネット上に無闇に流出させてこなかったのかもしれない。

ところが、今回は異例とも言えるスピードで事前に広がってしまっていた。“業界タブー”を破った人物は、アンチ小池のネット民に格好のネタを与えたわけだが、よほどの動機があったのだろう。

しかし、私は当該ゲラを見るまでもなく、週刊ポストの入江氏スキャンダル報道には特に新しさを感じなかった。なぜなら、実は、先月から「入江氏がシングルマザーではなかった」というネガティブキャンペーンが、アンチ小池のネット民の間ですでに盛り上がっていたからだ。

それらのツイートの中には、昔の週刊誌報道のインタビュー内容などで再婚の事実を提示したものまであった。この画像はある人が入江氏のアカウントに宛てたものだが、今年55歳の彼女がまだ40代前半の頃(つまり最初の夫の事故死から約10年後)に取材に応じたファッション誌で、「2人の男の子とご主人の4人家族」と書かれた記事をもとに「シングルマザーなのか、再婚なのか」を“公開質問”している。ツイートは6月10日付と、先週末のことだ。

※ツイッターより:一部加工してます

アゴラの読者なら、いつぞや見た光景と思うだろう。そう、蓮舫氏が二重国籍疑惑で追い詰められていったプロセスを彷彿とさせる。あの時も、アゴラでの疑惑指摘に当初はしらを切っていた蓮舫氏だったが、それに怒りを覚えたネットの人たちによって、蓮舫氏が90年代に取材に応じた新聞や雑誌のインタビューで「自分は台湾籍」などと話していた過去が次々と発掘されてしまった。

さらに、さかのぼっていくと、「都民ファーストの真実」を名乗るアンチ小池のアカウントが“再婚”の事実を問いだしているのは、なんとゴールデンウイーク中の5月初めだ。すでに危機の芽は出ていたのだ。

「世論ゲーム」が一変。問われる危機対処の手腕

今回の件も含めて、選挙プロの人たちと意見交換をしていると、「二重国籍の問題以降、ネット民の追及が本当に侮れなくなった」という認識が広がっている。やはり「世論ゲーム」のルールが昨年の都知事選、二重国籍問題で一変してしまったのだ。

かつてなら、ネットで騒ぎになっても、リアルへの転換、つまりマスコミ報道に至る可能性は高くなかったが、数年前の「バカッター」騒動の頃には、コンビニ店員などのイタズラがネット上で炎上し、マスコミ報道や店舗閉鎖などのリアルに波及するという情報のサイクルが確立。それが政治や選挙の世界にもどんどん波及しており、追及された側の政治家や候補者が初動対応を誤ると、蓮舫氏のように場合によっては、取り返しのつかない事態になる可能性も高まっている。

入江氏(手前右から2人目)、元テレ朝の龍円愛梨氏(同3人目)ら注目度の高い女性候補者を擁する都民ファーストの会(TBS「Nスタ」より)

ここまで私が仄聞している各地の選挙情勢では、槍玉にあげられた女性候補予定者たちは堅調に戦うとみられてきた。入江氏の“再婚疑惑”に関しても、週刊誌記者に真正面から立ち向かってしまうような稚拙な広報対応(マスコミ勤務者がやりがち)を見せたことで幾分かのマイナスにはなろうが、都民ファースト全体の大きな失速につながるだけのインパクトがあったかというと、アンチ小池のネット民には気の毒(?)だが微妙なところだ。

しかし、ネット上で事前に危機の萌芽がありながら、これまでの常識的なやり方でスルーしていると、ネットの炎上がリアルに燃え広がった場合に後手に回る恐れは今回のケースを見ても十二分に示唆している。都議選の試練を乗り越えたとしても、政局がまた激化し、スキャンダル合戦も早晩予想されるだろう。何かあった時の危機対処が甘くなると、まさに後手に回って政治的求心力をみるみる落としていく“蓮舫化”の憂き目に合ってもおかしくない。

拙著『蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』でも指摘したが、“くのいち軍団”の総大将である小池知事は都知事選の冴え渡っていた時に関しては、二重国籍問題当時の蓮舫氏と比べて、初期対応・危機対処の能力の差が際立っていた。都議選まで10日ほどに迫ったが、小池氏のそうした部分が健在なのかも含め、都民ファーストの会の情報戦に対するお手並みを拝見したい。

蓮舫VS小池百合子、どうしてこんなに差がついた? - 初の女性首相候補、ネット世論で分かれた明暗 - (ワニブックスPLUS新書)
新田 哲史
ワニブックス
2016-12-08

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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