防衛大の全学生に義務づけられる「メモ術」の秘密

尾藤 克之

写真は濱潟氏(トークライブにて)

防衛大は自衛隊の幹部自衛官を養成する教育・訓練施設である。卒業式は内閣総理大臣や防衛大臣の出席、訓示が慣例となっている。「自衛隊法第53条」及び「自衛隊法施行規則第40条」に則り、宣誓書に署名捺印をする事が義務付けられているが、これは、日本国憲法、校則遵守への宣誓となる。

何があっても必ず結果を出す! 防衛大式最強の仕事』(あさ出版)の著者であり、防衛大のメソッドを使用しながらコンサルティングサービスを提供している、濱潟好古(以下、濱潟氏)は防衛大出身で知られている。今回は、防衛大の数多くのノウハウのなかでもすぐに実践できる「メモ術」について聞いた。

防衛大のメモ術とはどのようなものか

――防衛大の全学生は「メモ」を携行することを義務づけられている。点検時には携行品としてメモを持っていなければ不合格になるとのことだ。

「上級生からの伝達事項はすべてメモしなくてはならないため、1学年時はとにかく『メモ魔』になります。全学生向けへの連絡は学生舎内の『放送』で行われるのですが、放送が流れ始めると1学年はすべての作業を止めてメモを取る、それが当たり前でした。メモを取る理由は2つありました。」(濱潟氏)

「1つは、1学年は防衛大生活で覚えることがたくさんあるので備忘録として、もう1つはその場にいない人に情報を伝えたり、共有したりするためです。」(同)

――放送で流れる連絡は予定に関するものが多いそうだ。放送を聞いていない上級生がいれば、1学年はメモした内容を正確に伝えなければいけない。

「予定を伝える放送が流れたときに学生舎内にいなければメモを取ることはできません。そういうときには、学生舎内にいた同期に情報を共有してもらい、対応します。一度、メモを持たずに廊下に出たときに放送が流れたことがありました。当然メモをすることができません。上級生からすぐに指導がありました。」(濱潟氏)

「数秒前に流れた、たかだか2分程度の放送なのに、完璧に答えることができず自分でも驚きました。人の記憶とは、それくらいあいまいで、頼りないものなのです。そのことは肝に銘じておきましょう。」(同)

メモ術には4つのポイントがある

――次のような経験はないだろうか。タスク確認で4つほど確認事項があったが、最後の1つがどうしても思い出せない。

「こうしたことは『メモ』を取っておけば防げます。記憶を呼び起こしている間は、他の何も手につきません。仮に漠然と思い出せたとしても、あいまいな記憶を基に作業しては、アウトプットの質の低下にもつながります。メモは仕事のムダをなくすだけでなく、質を上げる最強のツールなのです。」(濱潟氏)

「防衛大のメモ術の特徴は、メモは情報を人に伝えたり共有するために取るものであるということが前提であることです。人に伝えるものであるため、メモをした内容を自分でもしっかりと把握しなければなりません。」(同)

――数年前にノート術というものが流行った。テーマ毎にノートを用意して整理する術だ。ただし、自分で理解するためのもので、人に伝えたり共有することが目的ではなかった。そういえば、ノート術の話は最近聞かなくなった。

「防衛大では、使うメモ帳は1冊です。1冊に情報を集中させます。どのメモ帳にメモをしたのかがわからないという事態を避けるためです。そしてポイントは次ぎの4つです。

(1)日時記入(入手した情報の日時)
(2)情報先(誰の情報か)
(3)キーワード(覚えていれば加筆は簡単)
(4)箇条書き(大切なことは、すべて箇条書き)

メモをすることで頭の中が整理できます。自分の記憶を過信せず、些細なことでもメモを取るようにしてください。」(濱潟氏)

――本書には、日常で役に立つテクニックが紹介されている。若いビジネスパーソン向きと考えられるが、上司のコネタとしても役立ちそうだ。

参考書籍
何があっても必ず結果を出す! 防衛大式最強の仕事』(あさ出版)

尾藤克之
コラムニスト

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