原油先物価格が再び下落傾向に、物価への影響も注意

21日の原油先物市場では、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)8月物が一時、42.05ドルと期近物として2016年8月11日以来ほぼ10か月ぶりの安値をつけた。今年1月に55ドル台をつけていたが、50ドル台で次第に上値が重くなり、米在庫増が嫌気されて3月に50ドルを割り込んだ。

その後いったん買い戻されて53ドル台まで回復。しかし、米国内での増産が続いていることなどを嫌気して4月に再び50ドル割れとなり、主要産油国が減産しても需給改善につながりにくいとの見方から5月5日に43ドル台に下落した。

そこから再び切り返したが、52ドルあたりまで。5月25日のOPECと非加盟の主要産油国がOPEC総会後の閣僚会合において協調減産を2018年3月まで9か月間延長することで合意したにも関わらず、利益確定売りに押され50ドル割れとなった。そこからダウントレンド入りし5月5日の直近安値を下回ってきた。

ここにきての原油先物の下落には、これといって材料が出ているわけではない。今回の下げのきっかけが、予想通りの減産合意によるものであったことをみても、原油先物の上値の重さが伺える。これには米国の増産が続いていることや、ナイジェリアやリビアなどで供給拡大の動きなどもあり、根強い供給過剰懸念が原油先物の下落の背景にあるとみられる。

今回は中国など新興国の景気動向などを背景とした原油先物の下げでなく、需給そのものが反映された格好の下落であるため、急落は考えづらい反面、大きな戻りも期待しづらい。次の下値のポイントは昨年8月1日につけた39ドル台、つまり40ドルを割り込むかどうか焦点となりそうである。

原油価格の動向は直接、物価に反映されることから、日銀にとってはさらに物価目標が遠のくことも予想され、FRBの今後の利上げペースにも影響してくる可能性がある。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。