【映画評】いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~

2017年06月27日 11:30
提供:ショウゲート

提供:ショウゲート

81歳になった芦村朋子は、亡き夫・吾郎との思い出を手記にまとめようと慣れない手つきでパソコンに向かっていた。だが朋子は病で倒れてしまい、代わりに孫の理が作業を引き継ぐことになる。手記を読み、まとめていく中で、理は、戦中、戦後の困難な時代を必死に生き抜いてきた祖父母の波乱の歴史と、強い絆で結ばれた夫婦、家族の物語を知ることになる…。

俳優・向井理の祖母・芦村朋子さんの半生を映画化した人間ドラマ「いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~」。祖母の卒寿(90歳)のお祝いに、家族や親せきが自費出版した手記「何日君再来」を、向井理自ら映画化に向け7年の歳月をかけて企画してきた作品だそう。朋子と吾郎は結婚し、満州へ。敗戦後の引き上げ、朋子の実家でのつらい暮らし、職を変えながら家族で支え合って生きた日々。それらを、過去と現代を交錯させながら丁寧に描いている。戦中・戦後の混乱と一言でいうが、朋子と吾郎夫婦は、不運と苦労の連続で見ていて痛々しいほど。それでも、時折訪れる小さな幸福を糧に、笑顔を失わず生きる姿が感動的だ。故郷・愛媛を出てから、茨城、福島、大阪と移り住んだのが不思議だったが、戦後すぐは、大都会への移住が制限されていたということをこの映画で初めて知った。ファミリー・ヒストリーは誰の胸にもあるものだが、この夫婦は、特別な才能や財産があるわけでもなく、偉業を成し遂げたわけでもない。物語として大きな盛り上がりに欠ける感は否めないが、だからこそ、昭和を生き抜いてきた、すべての名もない庶民の代表のような存在に思える。タイトルの“何日君再来”とは、1937年に上海で製作された映画「三星伴月」の挿入歌で、日本でも大ヒットし、多くの歌手によってカバーされた歌謡曲の名曲だ。本作で主題歌を歌うのは高畑充希で、彼女の透きとおるような歌声が耳に残る。先日、亡くなった女優・野際陽子さんの遺作となったことも付け加えておきたい。
【60点】
(原題「いつまた、君と ~何日君再来(ホーリージュンザイライ)~」)
(日本/深川栄洋監督/尾野真千子、向井理、岸本加世子、他)
(家族愛度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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