皇位継承予備群は数十人以上は最低でも必要:「平成皇室論」④

2017年07月05日 06:01

皇室ご一家(宮内庁サイト:編集部)

女系天皇論者がよく言うのは、皇位の安定的な継承のためには、男系男子にこだわっていては、皇統の断絶を招きかねないということだ。

しかし、彼らの言う女系とは今上陛下の子孫に限られているようだ。つまり、悠仁さまのほか、愛子・眞子・佳子さまとその子孫なら誰でもよいことにすれば皇位の継承は安定するとすることだが、これはおかしな議論だ。男系男子に限るべきでなく女系も認めるべきだというなら、今上陛下の女系子孫に限る理由がない。

そもそも特定の君主の子孫に継承権を限定するというのは、そうでないと、なんらかの不都合が生じる場合に限られる。たとえば、イギリスはハノーバー朝を開いたジョージ一世の母で、英国王ジェームズ一世の孫であるソフィアの子孫に限っているが、これは、カトリック教徒を排除するための規定であるが、それでも、二千人以上の該当者がいる。

オランダは、ウィレム一世の子孫だが、これは初代国王であって、日本で言えば神武天皇の子孫といっているのと同じだ。少なくとも限定をかけてもいいのは、王朝が交代してから後とか、中興の祖として特別な帝王の子孫に限るときくらいだろうし、それも、その条件で最低でも数十人のグループでなくてはなるまい。

日本の皇室の場合だと、南北朝時代の南朝のほうは正確にその全容を把握することすら出来ないが、現在の皇室の先祖である北朝の子孫ならだいたい把握できる。あるいは、中興の祖というものがあるとすれば、それは明治天皇しかあるまい。

だから、もし、女系も認めるというなら、少なくとも明治天皇の子孫すべてを対象とすべきだ。明治天皇の皇女が、北白川・東久邇・朝香・竹田の各宮家に嫁いでいて、かなりの子孫がいる。また、三笠宮・高円宮には合計で5人の女王がおられるが、その子孫は大正天皇の血筋を引くことになる。そして、昭和天皇の皇女のうち長女の成子さまは東久邇家に嫁ぎ五人の子がいるし、島津貴子さまにも男子がある。

私は男子男系の原則を安直に外すべきでないものの、女系も全面否定ではない。むしろ大事なのは、ほぼ無限に皇位継承候補がいるということだ。少なくとも、たとえば、100年後に今上陛下の血を引く人がいなくなったからといって皇室制度を店じまいするわけにはいかない。

4人もおられれば大丈夫という人もいるだろうが、共通の遺伝的特質をもっておれば、子孫をいずれの方もあまり残されない可能性も高くなる。そんなときになって、対象外として切り捨てた旧宮家などから探し出してもなんの説得力もない。

しばしば、女性宮家の制度をつくって、愛子・眞子・佳子さまの子孫を皇位継承候補にすれば皇位継承は安定するようなことをいう人がいるがとんでもない勘違いだし、むしろ、皇室制度を根底から危うくするだろう。

また、歴史を見れば、男系でも女系は補完する要素として重要だ。日本では、男系の遠縁の人物を天皇にするときは女系の近親者と結婚させたりしてきたし、女系の天皇に男系の夫を迎えることで正統性をもたせることも選択肢だ。

現在のヨーロッパの王室のほとんどは、フランス王家(カペー家)の血を引いているが、カペー家は王位をカロリング家から奪った後でだが、カロリング家の血を引く王妃を迎えて正統性を強化したので、たとえば、現在のイギリス王家もカロリング家の血を引いているのである。

昨日、拙著「男系・女系からみた皇位継承秘史」(歴史新書)が発売になったが、本書では、男系女系あらゆる可能性の検討をし、また、古今東西の継承問題のケーススタディーなどもしている。すくなくとも、皇位継承問題でこれまででもっとも、詳細で遺漏なく全体像をとらえられる情報を網羅したと自負している。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学大学院教授

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