医師に聞いた集中力アップ術!村上春樹のアレを見習え

写真は講演中の樺沢医師。

全ての人間に、1日24時間は平等に与えられている。しかし、現実的には時間のつかい方が上手くいかずに、「能力の差」「収入の差」などさまざまな差が生じている。そして年齢を重ねるごとにその差は拡がる。「時間を有効活用したい」「メリハリをつけて成果を出したい」と思っても、「時間のつかい方」は、学校では教えてくれない。

精神科医、作家として、精神医学や心理学の情報を発信している、樺沢紫苑(以下、樺沢医師)は、「日本で最もインターネットに詳しい精神科医」として、雑誌、新聞などの取材やメディア出演も多い。今回は、「正しい時間術」について伺った。近著に『脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』(大和書房)がある。

集中するための儀式をもっているか

――作家が小説を書く場合、「温泉宿に缶詰になって書き上げる」という話を聞きたことはないだろうか。では、なぜ温泉宿にこもるのか。「自分のオフィスで書いたほうが効率的だ」と思う人もいるだろう。

「それは、『人的な横槍』をブロックして、すべての雑念を排除し、集中力を高めて、一気に執筆を終わらせるためです。村上春樹は、著書『職業としての小説家』(スイッチパブリッシング)のなかで、自分の執筆スタイルを明らかにしています。村上が小説を書くときは、海外のカフェで書くことが多いそうです。」(樺沢医師)

「海外のカフェであれば、誰からも声をかけられず、街の風景にとけこみながら、集中して小説を書けるようです。そして、その時間がとても楽しいのだと。」(同)

――集中する作業が多い人には、気分を落ちつかせるための、お気に入りの場所があるものだ。私(筆者)は新宿のビジネスホテルを利用することが多い。気分転換はお気に入りの料理屋で軽くヤルこと。部屋に戻るとスイッチがはいり集中力が高まってくる。

「私のお気に入りの執筆場所は、『行きつけのカフェ』です。青空と緑が見える、窓に面した席がお気に入りです。青空と緑を眺めながら、優雅に執筆。圧倒的に楽しいし、集中力も上がります。大切なことは、圧倒的に集中できる、『缶詰仕事』ができる、自分のとっておきの空間であること。」(樺沢医師)

「そこは、かならず『缶詰』になれるという『集中空間』なのです。『集中空間』での仕事が習慣になると、脳がそれを記憶してくれます。ここは『集中して仕事する場所です』というようにです。そうなると、雑念も入らないし、脳も集中力を高めるようにコンディショニングしてくれます。」(同)

――もし、わかりにくいようなら、アスリートのルーティンを思い出してほしい。五郎丸選手のキック、イチロー選手の動作といえばわかるだろう。目標があり、成功に導くための儀式みたいなものだ。樺沢医師の場合は、「行きつけのカフェ」の「お気に入りの席」に座ることが、集中するための儀式になっているということになる。

サラリーマンでも集中できる方法がある

――集中することで、効率的に仕事をこなして高い成果を出すことが理解できた。しかし「サラリーマンには缶詰仕事は難しい」と思った人もいるだろう。

「サラリーマンの場合、デスクに座って仕事をしていれば、上司が仕事の進捗を確認しにきたり、部下が質問しにきたり、顧客や取引先からの電話が次々と鳴ったり、気が休まる暇もないので不可能に思えるかもしれません。友人にこの話をしたところ、次のような答えが返ってきました。」(樺沢医師)

「『社内の会議室に行くと集中できます。会議室が空いているときに、資料とノートパソコンを持って会議室にこもるんです。邪魔が入らなくて、集中して仕事ができるんですよ』と言っていました。」(同)

――つねに監視されているような勤務状態だと難しいかもしれないが、数時間、誰とも会わない、電話に出なくても大丈夫な時間があるなら試す価値はありそうだ。

「できるだけ隔離した環境で集中力を高めると仕事効率が一気に高まるということ。仕事が猛烈にはかどるという仕事術のエッセンスだけでもしっておけば、閉鎖環境を上手に活用できるかもしれません。コアな集中力を必要とする仕事は、横槍が入らない圧倒的に『集中できる環境』で行うべきなのです。」(樺沢医師)

――本書は医学的な見地から、「時間術」がわかりやすく解説されている。新入社員や、新任管理職など環境変化のあった人、多くのビジネスパーソンにも参考になることだろう。

参考書籍
脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術』(大和書房)

尾藤克之
コラムニスト

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