バロンズ:米株市場は、長期金利の上昇を無視できるのか

2017年07月10日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは再びインデックス投資VSアクティブ投資の議論をぶつける。米株市場に上場する銘柄は1998年の7,562株から直近で3,599株へ減少した一方で、指数は10年前の1,000件から6,000件以上に及ぶ。パッシブ運用への需要が高まり、モーニングスターの調査によると年初来5ヵ月間におけるパッシブ運用の投資信託並びに上場投資信託(ETF)への資金流入額は3,380億ドルと、2016年の5,060億ドルを凌ぐ勢いだ。このままのペースでは、2017年の流入額は8,000億ドルと、前年比58.1%増となる見通し。パッシブ運用ヘ傾く流れは、止まりそうもない。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週は上昇に転じる長期金利に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

米株市場、低金利の終焉で迫る脅威—Stocks Threatened by Looming End of Low Rates.

これは終わりの始まりなのか、始まりの終わりなのか。チャーチル元英首相の名言を借りるなら、世界中の中央銀行の政策と長期金利の動きは、投資家にこうした疑問を投げかける。大手投資会社ブリッジウォーターのレイ・ダリオ最高経営責任者(CEO)は、6日にリンクトインに投稿し中央銀行がゼロ金利などを通じて提供した過剰流動性の時代は終わったとの見解を寄せた。中央銀行の政策で資産価格が上昇し名目金利は名目の成長以下にとどまり、ダリオCEOに言わせれば「それは美しいデレバレッジを生み出した」という。

その一方で、ダリオ氏いわく金融政策が陳腐な経済状況をもたらし信用と成長はバランスの取れた伸びを示してきたという。富裕層に資産インフレを生み出し、その他の人口にある程度の所得を与えた。しかし金融インフレが巻き戻されようとするなか、ダリオ氏は「流動性は増えるより縮小していくだろう」と見込む。引き締めはインフレや成長を加速も減速もさせないちょうど良いペースとなる見通しだが、あくまで「正しく行わず次の減速局面を迎えるまで」とも付け加えた。中央銀行の政策が心地良い音楽のような状態が続くまで、市場関係者は踊り続ければ良いとも指摘する。

長期金利の上昇は、金融政策が変化の局面に差し掛かるなか株式市場に暗影を投げかけた。米連邦準備制度理事会(FRB)は6月、予想通り2016年12月から3回目の利上げを行うに至る。欧州中央銀行(ECB)では、ドラギ総裁がデフレとの戦いに勝利を収めたことを誇らしげに宣言した。独10年債利回りは直近の最低から7日に2倍近い0.58%に達し、1年半ぶりの水準へ上昇。価格の急激な下落を招き、損失を被った投資家も少なくないはずだ。

米10年債利回りは直近の最低をつけた6月26日の水準から25bpも急伸、7日に2.39%で引けた、当時から米株は直近高値から1%下落、ナスダックは2.6%も落ち込んだ。

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(出所:stockcharts.com

Fedウォッチャーは、イエレンFRB議長の次の一手がバランスシートの縮小と捉え年内の実施を見込む。イエレンFRB議長は6月FOMC後の記者会見で、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)の償還は「静かに目立たずに進むだろう」と発言した。野村総研の主席エコノミスト、リチャード・クー氏は懐疑的である。Fedが再投資を止めれば市場は2019〜2020年にかけ6,000億ドル相当を余分に吸収せねばならず、その水準は米国の財政赤字の2倍に相当するためだ。

利上げの最中にあるにも関わらず、ドルが下落している点はインフレを押し上げかねず気掛かりである。米10年債利回りを3%に押し上げかねない。S&p500は足元の2,425から2,600と危険水域まで最高値余地を広げそうだが、ルーソールド・グループの主席投資ストラテジストいわくこうした上昇は1987年10月19日のような大幅下落を引き起こしかねない。当時は1日で22%も急落した。

FF先物市場は12月の追加利上げ、及びバランスシートの縮小を織り込みつつある。イエレンFRB議長は、12日に予定する議会証言で一連の政策の可能性や経済動向について数々の質問を受けるだろう。

経済動向と言えば、米6月雇用統計は健全な労働市場を裏打ちしたかに見える。しかし、グラスキン・シェフのデビッド・ローゼンバーグ主席エコノミストにしてみれば、平均時給の伸びの低迷に加え25〜54歳の働き盛りの男性陣の労働人口の減少が懸念材料だという。同時に16〜19歳で労働人口が20.3万人増加したほか、55歳以上で17.8万人増加した点に注目。過去1年間で複数の職を持つ人口が5.2%増加したとも振り返り、生活するにあたって所得の増加が必要な現実を浮かび上がらせた。著名なヘッジファンドのCEOは中央銀行が正常化を進めるまで踊り続ければ良いと語ったが、米国経済が奏でる音は必ずしもダンスに適していないようだ。


米6月雇用統計後、米株高・米債安(金利上昇)・ドル高と金融政策の正常化を進めるシナリオ通りの展開をみせました。シカゴ・マーカンタイル取引所がFF先物市場を基に弾き出す利上げ織り込み度”Fedウォッチ”では、12月の利上げ織り込み度が50.9%まで上昇しています。FOMC参加者の度重なるメッセージを受け、市場関係者が漸く9月のバランスシート縮小発表、12月の利上げの方向性に合わせてきました。もっとも、米経済自体は4〜6月期にピークを迎える可能性は見逃せません。NY連銀のNowcastによると4〜6月期GDP予測値は従来の1.91%増→1.96%増へ、7〜9月期GDP予測値も従来の1.61%増→1.78%増へそれぞれ上方修正されたものの、後者は前者以下にとどまる状況で変わらず。米経済の鈍化が鮮明な環境で金融政策の正常化を進めれば、不協和音が生じると考えるのが妥当でしょう。

(カバー写真:David Shankbone/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年7月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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