【映画評】歓びのトスカーナ

2017年07月12日 11:30

イタリア、トスカーナ地方。緑豊かな美しい丘にある精神診療施設ヴィラ・ビオンディには、心に問題を抱えた人々がそれぞれの方法で社会復帰を目指して暮らしている。ベアトリーチェはこの施設の女王様的な存在で、大きな声で人々に指示を与えながら施設内を闊歩していた。ある日、やせ細った身体にたくさんのタゥーを刻んだ若く美しい女性ドナテッラが入所してくる。ルームメートになったベアトリーチェとドナテッラは、ひょんなことから施設を抜け出して旅に出ることに。何もかも正反対の二人だっが、旅の途中で互いの過去や心の傷を知り、絆を深めていく…。

トスカーナの精神診療施設から脱走した2人の女性の破天荒な逃避行を描くヒューマン・ドラマ「歓びのトスカーナ」。舞台は精神診療施設だが、日本でいう精神病院とはずいぶん異なる。自由な空間の中で、農業や手仕事を通して心の病に向き合いながら患者の自立を促すというものだ。最近では、同じくイタリア映画「人生、ここにあり」で、精神病院廃絶を決定したバザリア法成立後の患者の自立を描き、イタリアでの精神医療を生き生きと活写していたのが記憶に新しい。

本作のヒロイン二人は、外見も内面も何から何まで正反対だ。ベアトリーチェは裕福だが虚言癖があり、常にハイテンションで周囲を引っ掻き回す存在。一方、貧しい環境で生きてきたドナテッラは、過去のあるトラウマから自分の殻に閉じこもるローテンションの女性だ。定期的に安定剤等の薬の投与が必要だというのに、行き当たりばったりの逃避行に飛び出した二人の旅は、あぶなっかしいのに、なぜかキラキラしていて、幸せを求める冒険に思えてくる。とはいえ、二人は常に施設の職員から追われる身。けっこうハラハラさせられてしまうのだ。秀作「人間の値打ち」のパオロ・ヴィルズィ監督は、正反対の女性二人の友情物語から、自由に生きる素晴らしさ、過去の悲しみも含めて人生を肯定する勇気を歌い上げる。「テルマ&ルイーズ」を連想する車での逃避行、美しいトスカーナの風景と、ビジュアル的にも見応えがある佳作だ。
【65点】
(原題「LA PAZZA GIOIA/LIKE CRAZY」)
(伊・仏/パオロ・ヴィルズィ監督/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ミカエラ・ラマツォッティ、トンマーゾ・ラーニョ、他)
(友情物語度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。

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