都民ファーストの人事に見えるメディアが書かない錯綜

尾藤 克之

写真はsankeibizより引用

都民ファーストの会の新役員人事が決定した。共同通信によれば、幹事長:増子博樹都議(3期)、政調会長:山内晃都議(2期)、総務会長:荒木千陽都議(1期)という体制が発表されている。3日に代表を辞任した小池都知事は役員会から外れ、引き続き特別顧問を務めるとしている。この役員人事からおぼろげながらも見えてくるものがある。

新役員3名の概略等について

増子都議(元民進党)は2013年の選挙では落選したが、連合文京地区協議会議長の要職にあり、UAゼンセン東京の推薦を得ている。UAゼンセンは民間の労組として国内最大規模をほこる。今回の都議選で連合は、民進党ではなく都民ファーストの会を支援した。

あくまでも推測だが、労組に影響力をもつ増子都議の意向が、連合の推薦に大きく影響を及ぼしたのではないだろうか。影響を及ぼすというよりは、推薦を引っ張ってきたと形容したほうがわかりやすいかもしれない。だとすれば、功労者である、増子都議が幹事長に起用されることは理解できる。

これが事実であれば、従来、連合と蜜月関係にあった民進党には大きな打撃となる。さらに今後、都議選で都民ファーストの会を支持したことで、国政との間でねじれ現象が発生する。民進党と連合との関係はどうなるのだろうか。連合は民進党に対して、憲法改正議論をはじめるように促していたが如何に。今後の対応が注目される。

山内都議(元自民党)は、品川区議を3期務めたのち、都議に転進し自民党副幹事長などを歴任している。今年の2月に離党し都民ファーストの会に合流。東京都上・下水道事業政策研究会事務局長などを経歴しており、政策面での期待がされているのだろう。キャリアを考えれば、政調会長という要職も無難にこなすと思われる。

荒木都議は初当選になる。2011年から小池都知事の秘書として活動をしているが信頼が厚いのだろう。初当選での総務会長就任は、いわゆる抜擢人事になる。総務会は党の運営に関する重要事項を決定する機関であり、総務会の決定が党の決定と同等の権限をもつ。荒木都議の就任で小池都知事の意向が、より反映されやすくなるのだろう。

冷遇された「みんなの党」系列

評価や抜擢には、その反対のケースがつきものだ。今回は、「みんなの党」系列が該当する。小池氏が衆院議員を辞職し都知事選出馬の際、流れをつくり体制構築に尽力したのが、渡辺喜美議員(みんなの党代表/以下、渡辺議員)だったといわれている。そして、「かがやけTokyo」のメンバーも、小池都知事誕生に腐心することになる。

そのなかでも、会派の代表であり幹事長でもある、おときた駿都議の貢献は非常に大きかったのでないかと考えている。小池都知事の代わりにメディアに出演し、丁寧で清潔感のある立ち居振る舞いには、多くの人が好感を持ったことだろう。都知事選以降、さらに、おときた都議のメディア露出は増加していく。

都民ファーストの会では、小池都知事に次いで知名度があるのが、おときた都議であり、「党の顔」だと考えている人も少なくなかったと思われる。しかも、今回の都議選では、下馬評で有利な選挙戦を戦っていたことから、他候補の応援も積極的におこなっていたと聞く。当選1回の議員になかなかできることではない。

少々調べてみたところ次ぎのこともわかった。元みんなの党の現職区議約10名には希望の塾に参加しているにも関わらず、1人も公認が出ていない点である。また、都議選前の6月、渡辺議員が「都民ファーストの会」に協力するとの意向が報道された。これは、同党の国政への進出と、渡辺議員の衆議院くら替えを示唆するものである。

事実ならば、小池都知事と渡辺議員は手を結んでいるはずだが、実際はどうなのだろうか。今回の、人事についてどのように考えているのかも興味がある。政治における人事は難しい。100%納得できる人事はあり得ないからだ。トップに君臨する人の専権事項だが、単純な話ではないことが多い。また、おときた都議の本音も聞いてみたい。

尾藤克之
コラムニスト

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