所有者不明土地の公的活用は、適正かつ公平な手続で!

2017年07月13日 06:00

写真はイメージです(写真AC:編集部)

昨今、所有者不明土地を公的に活用するための措置が検討されているようです。

所有者不明の土地、公的利用へ新制度着手 道路や公園に(朝日新聞デジタル)

所有者不明土地というのは、相続登記がなされないまま故人の名義のままで放置され、容易に相続人が確定できない土地を指します。日本全国の土地の2割が、この所有者不明土地だとも指摘されています。

具体例を挙げてみましょう。

誰も使っていない山林や原野が全国各地に存在します。このような土地の登記簿を調べると明治生まれの「山田太郎」さん名義になっており、既に死亡しています。当該土地の近隣住民に尋ねても、山田太郎さんの子供や孫のことを知っている人がいません。このような土地を、「山田太郎」さんの名義のままで公的に活用し、後に相続人が出てきたら補償金を支払うというのが検討案の大筋のようです。

しかしながら、この措置は財産権を保障した憲法29条に違反する可能性が極めて高いと言わざるを得ません。憲法29条は以下のように規定しています。

財産権は、これを侵してはならない。
財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。

それを受けて制定された「土地収用法」は、公的使用のための土地の収用手続と補償について詳細に定めています。

先の山田太郎さんのケースを考えれば、戸籍を調べれば必ず現在の法定相続人を見つけることができます。手慣れた司法書士さんや行政書士さんなら、さほど日数をかけずに「相続関係図」と「現在の権利者の住所」まで調べ上げてくれます。権利者が100人以上いる場合も、決して珍しいことではありません。

私もかつて、所有者不明土地の案件を十数件以上受けたことがありますが、事前に現在の所有者の方々に「取得時効を原因とする移転登記手続訴訟の訴状と呼出状が裁判所から届きます。名義変更にご異議がなければご出頭いただく必要はありません。もちろん、意義を述べる権利も出頭する権利もあります。…後刻送付される判決には”訴訟費用は被告らの負担とする”と書かれることがありますが、一切のご負担をおかけしないことをお約束します」という趣旨の通知を出して訴訟を提起しました。例外的な一件を除いて、残りの案件全てで答弁書提出も出頭者もなく、欠席判決で滞りなく移転登記ができました。

このように、さほど時間と費用をかけなくても現在の権利者を確定することができるのに、無断で公的活用をしてしまうのは大いに問題があると考えます。順序としては、権利者を確定させて相続登記を経由し、買収が困難であれば土地収用法に基づいて手続を進めればいいのです。

遺言等があって法定相続分通りに分割されていないケースを懸念する人もいますが、法定相続分については移転登記してしまえば他の相続人は(遺言がある云々という理由で)対抗することはできません。後は、内輪の問題として相続人間で調整することになり、公的機関の権利は確定します。

このように、本来の手続を遵守しないと、同じように隣接する山林や原野でも、権利者が判明している人と(調査をしないと権利者が明らかにでならない)所有者不明土地の権利者たちとの間で不公平が生じてしまいます。

同じように活用されていない山林や原野でも、判明している権利者は正式な手続を経て補償金ももらえるのに、判明していない権利者は知らないうちに収用されて補償金を受け取ることができません(後で判明すれば支払うとのことですが、事前連絡一切なしというのはあまりにも強引でしょう)。補償金を支払う必要があるのなら、きちんと権利者を調べて支払い通知を発するべきです。

補償が必要な「特別犠牲」に該当せず補償金を支払わないというのであれば、権利者が明確な土地についても同様の扱いをすべきです。長年まったく利用されていない所有者不明土地や隣接地に関しては、「補償不要」とする法解釈や運用を行ってもいいと思います。賛否はあるでしょうが…。

そもそも、所有者不明土地か否かは偶然性に大きく左右されるものなのです。相続人が少数できちんと相続登記をしている土地の隣地が、相続人多数のため相続登記がなされていなかったとか、一方は登記に几帳面であるのに対し他方は大雑把であるというように、土地の状況ではなく所有者たちの内部事情に左右されるケースが多いのです。

同じ状況の土地に関して差別的な法執行手続を行えば、場合によっては憲法14条によって保障されている法の下の平等に反する恐れもあります。

私有財産の利用や没収は、正々堂々と、かつ公平に行うのが筋であり正義であると思うのですが、いかがでしょう?

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荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年7月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。

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