ワインづくりに必要な「3種の神器」を知っているか

写真は著者経営のファームにて撮影したもの

3種の神器という言葉がある。元々は、日本神話において、天照大神から授けられた、「鏡・玉・剣」のこと指す。戦後期に豊かさの象徴となった、「冷蔵庫、洗濯機、テレビ」も「3種の神器」とされ、60年代の、「カラーテレビ、クーラー、自家用車」は「新・3種の神器」と呼ばれた。「3種の神器」とは、一般に広く使われる用語でもある。

最近、ワインがブームが到来しているようだ。国税庁の調査によればワイン市場は拡大傾向にあり、2012年以降、第7次ワインブームとよばれている。実は、このワインづくりにも必要な「3種の神器」が存在する。全国で初めてワイン特区制度を利用した個人ワイナリーを立ち上げた、蓮見よしあき氏(以下、蓮見氏)に話を聞いた。

ワイナリー経営のノウハウとは

――日本人は、すぐれた製品が3つあると、「3種の神器」と称することが多い。それでは、ワインづくりの「3種神器」とはなんだろうか。

「ワイナリー経営ではどんな3種の神器が必要でしょうか。私は、箱モノ、カフェ、SNS、の3種と考えています。資金がない人が起業する場合は空き店舗でワインが造れそうな物件を安く借りられれば、開業時の資金をかなり抑えることが可能です。経営が波に乗って余裕ができたら建物を新築してもいいというのが私の考えです。」(蓮見氏)

「マスコミに取材されて、ワイナリーがテレビや雑誌などで紹介される場合、ワインと一緒に建物の画像が出ることが多くあります。その際、あまりにもそのワイナリーのイメージにそぐわない建物だと印象がよくありません。」(同)

――やはり、ワイナリーも「見た目が9割」ということらしい。「3種の神器」にあげられた「カフェ」はどのような形態が理想だろうか。

「カフェですが、飲食店であればカフェでもワインバーでもレストランでも構いません。ワイナリーで造ったワインをそのまま消費できる場所を作ると利益率が高まります。直営の飲食店である必要はありません。知り合いで飲食店を経営されている方がいれば、その方とコラボしてもいいですし、さまざまな形態が考えられます。」(蓮見氏)

「いずれにしても、売り先を自分のルートでもっておくのがポイントです。飲食店にこだわらず酒販店や卸業者などに出すことも効果的でしょう。」(同)

――「3種の神器」の最後にあげた「SNS」の秘訣はなんだろうか。商品の宣伝や、ルートの確保には、SNSが欠かせないことは間違いない。

「ワイナリー起業をしてから、さまざまな媒体を使って情報発信してきましたが、やはりSNSが一番使い勝手が良いと思っています。ワイン造りの作業にはたくさんのエピソードがあります。それらについて、SNSを通じて発信すると、ワインが好きな方はとても興味をもって読んでくれます。」(蓮見氏)

もっとも大切なのはルート確保

――もっとも重要な点は、ルートを確保して売上げにつなげるかにある。少々、会社のケースについても説明いただく。

「売上の半分以上は酒販店、卸業者への売上です。ただ何十万ケースも製造するほどのワイナリーではないので、製造ロットにも限界が出てきます。そうなるといかに利益率を上げるかということになります。たとえば、税込3000円のワインは、酒販店さんには7~8掛けくらいの値段、卸業者に至っては5~6掛けくらいで出すことになります。」(蓮見氏)

「酒販店や卸業者に出荷する場合は、ある程度のロットを購入してもらえることがほとんどです。自分で営業できないところにも販売してくれるので、積極的に酒販店や卸業者に出荷して、双方にとってメリットの高い関係を目指しています。同時に直営のショップやカフェにも同じくらいの力を入れています。」(同)

――蓮見氏によれば、直営店はワインの販売、テイスティングはもちろん、シェフを常駐させ、ランチから本格的なディナーコースまで提供しているそうだ。

「まだまだ繁盛しているとは言い難いのですが、ワインを実際に味わってもらう場所、ワイナリーのアンテナショップという位置付けで重要な役割を果たしています。」(蓮見氏)

――本書は、「日本一小さいワイナリー」から、世界に通用するワインを目指すまでに成長したノウハウが公開されている。ワイン特区の活用方法、資金の調達方法、出資者の募り方など、筆者でしか語れないワイン造りのノウハウは興味深い。

参考書籍
『はじめてのワイナリー』(左右社)

尾藤克之
コラムニスト

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