【映画評】銀魂

江戸時代末期。宇宙からやってきた天人(あまんと)台頭と廃刀令により、侍は衰退の一途をたどっていた。そんな時代でも侍魂を忘れずにいる坂田銀時は、ひょんなことから出会った新八、神楽と共に、何でも屋の万事屋を営んでいる。そんな時、江戸の町では、謎の辻斬りが出没。やがて事件を巡り、新八の姉の妙や攘夷志士の生き残り・桂小太郎、江戸の治安を守る特殊警察・真選組らを巻き込みながら、予想もしない騒動が起こり始める…。

パラレルワルールドの江戸を舞台に、普段は無類の怠け者だが、いざとなると仲間のために命がけで戦うヒーロー、坂田銀時の活躍を描く「銀魂」。原作は空知英秋の大ヒットコミックで、過去に劇場版アニメはあったが、今回は初の実写映画化となる。何でもありの原作の奇想天外テイストに加え、福田雄一監督の持ち味である、ユルいギャグ、ボケとツッコミ、出版社や配給会社をクロスオーバーした、権利ギリギリの他アニメネタまで詰め込んで、まさにお祭り状態だ。物語は、原作の中でも人気が高い「紅桜篇」をベースにしたおなじみのストーリーである。

高層ビルが連立し、エイリアンが闊歩する江戸の町で、ユルく生きる銀時たちが、大金目当てにカブト狩りに興じる冒頭から、ギャグ満載だ。何しろ原作から抜け出したかのような実写版のキャラクター再現率が高いので、ビジュアル的な満足度はかなり高い。いつもはだらしないがキメる時はキメるというギャップが魅力の銀時、終始シリアスな高杉、真面目なのに可笑しい、でも美しい桂など、キャストの配役はかなり成功していると見た。個人的には、着ぐるみ感丸出しのエリザベスのキャラが気に入っている(途中、少しだけセリフもある!)。幕府転覆を企てる高杉率いる鬼兵隊とのバトルのクライマックスは、あえて狙ったのか、CGが白々しすぎて物足りないが、何よりも作り手が楽しんでいるのが伝わってくるのがいい。名付けて、オールスターキャストの銀魂コスプレ大会。お祭り騒ぎを、つい堪能してしまった。
【60点】
(原題「銀魂」)
(日本/福田雄一監督/小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、他)
(キャラ祭り度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月14日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。