トランプ政権下、共和党はオバマケア代替案に二度目のサヨナラ

マコーネル上院院内総務が、遂に匙を投げてしまいました。

米上院による医療保険制度改革(オバマケア)代替案採決を断念すると明かしたのです。それもそのはず、中道派のスーザン・コリンズ議員(メイン州)、右派のランド・ポール議員(ケンタッキー州)の2人に加え、17日夜には右派のマイク・リー議員(ユタ州)、ジェリー・モラン議員(カンザス州)が反対を表明。上院で共和党は52議席という状況では造反は2人まで許容できたところ、4人になってしまい可決への夢が断たれてしまいました。マコーネル米上院院内総務いわく、まずはオバマケアの撤廃に注力するといいます。代替案は、その後で仕切り直しというわけですね。共和党としてオバマケア代替案にサヨナラを告げたのは、3月23日に米下院が採決を見送って以来、2回目となります。

マコーネル米上院院内総務の決断はトランプ米大統領の意思を反映したもので、ツイッターでオバマケア廃案を呼びかけていました。

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(出所:Twitter

そうかといって、オバマケア撤廃で共和党上院が一枚岩になるかというとそれも微妙と言わざるを得ません。アクシオスによると、そもそも共和党によるオバマケア代替案の世論の支持は非常に低い。オバマケアを通じて実施された低所得者層向け公的医療保険(メディケイド)拡張の恩恵を受けた州の米上院議員が支持するのか、判然としません。中間選挙を控え、オバマケアを支持する浮動票が共和党に投票しないリスクを高めます。また、保険市場を混乱させかねず産業にとっても歓迎できる内容とは言えません。

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(作成:Axiosを基にMy Big Apple NY)

オバマケアの支持率が高い点も、共和党が頭を悩ませる一因となっていることでしょう。カイザー・ファミリー・ファウンデーションが6月23日に発表した世論調査ではオバマケア支持率が51%と初めて過半数を超えた一方で、米下院のオバマケア代替案の支持率は30%に過ぎません。リベラル寄りのABC/ワシントン・ポスト紙が実施した世論調査でも50%がオバマケアに賛同し、米上院の代替案は24%程度でした。

トランプ米大統領の支持率が過去最低を更新したと囁かれる一方、政権の政策実行力とは別に特別選挙で共和党は勝利の果実をもぎ取ってきました。カンザス州(マイク・ポンペオCIA長官)をはじめモンタナ州(ライアン・ジンク内務相の議席)、ジョージア州(トム・プライス厚生長官の議席)、サウスカロライナ州(ミック・マルバニーOMB局長の議席)など、記憶に新しい。トランプ米大統領の低支持率やロシアゲート問題などにも関わらず共和党は快進撃を続けてきたものの、オバマケア撤廃に傾けば民主党に敵失を与えかねず。共和党はどのような決断を選ぶのでしょうか。左瞼の血栓除去手術により米上院の採決延期の引き金となったマケイン上院議員(アリゾナ州)の容体は思わしくないとのニュースも伝わっており、不安定な状況は続きます。

【追記】
結局、オバマケア撤廃案もスーザン・コリンズ議員(メイン)、シェリー・ムーア・カピート(ウェストバージニア)、リサ・マコウスキー(アラスカ)が反対し可決は絶望的となってしまいました。ランド・ポール議員をはじめ右派は撤廃に大賛成のところ、中道派の3人は、代替案なしで投票できないとの意思を表明。特にメディケイドが問題視され、他の2州の議員と違ってメイン州は拡張を受け入れていないもののコリンズ議員はメディケイド向け予算縮小などの悪影響を重視しています。中道派の意見を汲み取れば右派が黙っておらず、彼方立てれば此方が立たぬ状況に変わりない見通し。共和党が過半数を握ったとはいっても、政治膠着が終わりを告げるわけではない格好の例となってしまいました。まさに緊張の夏!?

(カバー写真:LaDawna Howard/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年7月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。